幼い頃、星葉の部屋には小さなフクロウ型の常夜灯があった。 ドアの脇近く、コンセントに取りつけられたほのかな灯りは、暗闇の中で頼もしい見張り番だった。 夜中に目が覚めてしまったときは、フクロウにそっと話しかける。 「さみしい」 「こわい」 「いやだなぁ」 すると、いつも返ってくるのは、 「ホーホー、ホーホー、ここで守っているからだいじょうぶ」 という、やさしくユーモラスな声だ。 枕から頭をあげて見つめると、フクロウは首をかしげるようにうなずいてくれた。 それで星葉は安心して、眠りに戻っていけるのだった。 昼間はただのプラスチック製にしか見えないのに、夜になって部屋が暗くなると、生命を吹きこまれたように明かりが灯る。 父親の転勤で大きな町に移ったとき、引っ越し荷物のどこを捜しても、フクロウの常夜灯は見つからなかった。たぶん、夜が更けても明るいままの都会をきらって、森へ帰ってしまったのだろう。