近年、一般向けの歴史書が何度目かのブームを迎えています。その中で問われないままに終わっている最大の存在「幕府」について、根本から問い直してみましょう。 ※本記事は、NHK出版より刊行予定のNHKブックス、東島誠『「幕府」とは何か』から、「はじめに」と序章「いま、なぜ中世史ブームなのか、そして、なぜあえて幕府論なのか?」を先出しでお届けするものです。 歴史学に何が可能か「歴史学に何が可能か」。これは、二〇一二年、つまり東日本大震災の翌年に與那覇潤と語り合った、雑誌対談のタイトルである。震災後、與那覇が『中国化する日本』(文藝春秋)を出し、私が『〈つながり〉の精神史』(講談社)を出したところで、この対談が実現した。内容的には、第二次大戦後、歴史学の最良の部分が、その時代時代のどのような知の営みとタイアップして展開されたかを中心に、縦横に語り明かしたもので、翌二〇一三年刊行の『日本の起源』(太田