1 生殖不能要件の違憲無効決定の影響 最高裁判所は、令和3年10月25日決定で、性同一性障害の性別の取扱いの特例に関する法律(以下、特例法)第3条1項4号、いわゆる生殖不能要件を違憲無効と判断した1)。 本判決後は、生殖不能とする手術を受けることなしに性別変更が可能となる。 遅かれ早かれ、戸籍上の性別が男性である人が出産する、あるいは、戸籍上の性別が女性である人が遺伝的父親となるケースが出てくるであろう。 そうすると、性別変更要件の1つである「子なし要件」(特例法第3条1項3号「現に未成年の子がいないこと」)は、撤廃するほかないであろう。性別変更後に、変更前の性別の生殖機能で子どもが生まれてくるなら、性別変更手続時点で子がいないことを要件としても無意味だからである2)。 次に、親子の法律関係についてはどう考えれば良いだろうか。 もっとも、戸籍上の性別変更を望むトランスジェンダーが、変更前の