【老苦(1)】 孤独という字は「孤」と「独」という二つの言葉からできており、 両方とも「一人ぼっち」という意味です。 ただ漢字の意味合いからすると、 親がいない状態を「孤」といい、 子どもがいない状態を「独」といいます。 終戦を迎えた頃の日本は、 戦災で親を失った孤児たちが町にあふれ、 『火垂るの墓』のような悲劇が全国各地でありました。 しかるに戦後70年経った今日では、 「孤」よりも「独」、一人ぼっちの高齢者が大きな社会問題になってきています。 「独居老人」「孤独死」といった暗い言葉もよく耳にするようになりました。 今後ますますこの問題は深刻さを増すでしょう。 連れ合いや家族、健康を失い、孤独に苦しむ人の様子が 仏典にもこう説かれています。 『父は母を先立て、母は父を先立てて、 獨(ひと)り空房を守り居るは、 なお孤客の旅寓に寄泊するが如く、 常に恩愛の情なく、復た談笑の娯(たのし)み無