【穢土(1)】 日本で彼ほど成功したものはないと言われる豊臣秀吉。 しかし天下人として送った晩年の彼は、 はたしてこれが本当に幸せな人なのだろうか、人生の勝利者といえるだろうか、 と首をかしげたくなるようなエピソードに事欠きません。 中でも、病に臥し、いよいよ死を覚悟した時、 跡継ぎである秀頼の行く末を案じ、 自分の死後、日本で最も有力な武将となる徳川家康に 我が子の行く末を託す際、すがりつくように家康に頼み込む様は痛々しいほどです 秀吉亡き後、家康が豊臣家に牙を剥くであろうことは 多くの武将たちがひそかに予感していたことではありましたが 秀吉とてあれほどの人です、 それらの武将以上にその時代の空気を感じ取っていたかもしれません。 それなのに、その家康より先に死んでいかねばならない無念さ、 そしてその一番危険な男に、大事な我が子を託さなければならないという 暗澹たる気持ちはいかばかりだった