長男の妊娠が分かったのは、震災の年の5月だった。 あの頃、地震と津波がひと段落して、今度は放射能騒ぎが起こっていた。 テレビでは政府が「ただちに影響は無い」といっていた。逆説的には「将来的には影響がある」と何度も繰り返している状況での妊娠の発覚。 逆算すれば、震災前。もしも震災の後なら「今はやめておこう」となっていたかもしれない。 「こんなタイミングで生まれてくるのかぁ」と思った。 あの頃の空気はそういう感じだった。世紀末感が半端無かった。 同じ頃、小さい子どもがいる友達が放射能から逃げるために2組も東京から移住した。 この子と二人のときに地震が来たらどうしようと妻がいった うちの嫁は子どもが生まれた後、軽い産後うつになって、しくしくと泣き出した。 「もしもまた地震が来たら、この子と逃げられるかな」 まっ暗い部屋でそう言って泣く妻に、僕は大丈夫と言い続けるしかなかった。 そういう時期だった
![あの日から5年で子どもが二人増えました - 世界はまだ油断してるから](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/a45a14552af1644aea9b49ca61fb3b3d53c9d785/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fcdn-ak.f.st-hatena.com%2Fimages%2Ffotolife%2Fk%2Fkinakonan%2F20160311%2F20160311213745.jpg)