『武士の一分』85点(100点満点中) キムタクの魅力を引き立てた相手役の檀れいが最大の収穫 山田洋次監督による、藤沢周平原作もの時代劇三部作の完結編である本作は、同時に木村拓哉が主演ということで、メディアから熱い注目を浴びている。視聴率請負男を主演に据え、万全の体勢で挑むこの映画がもし、コケるような事にでもなれば、大変な騒ぎになることは容易に想像できる。はたしてその演技は鑑賞に耐えるものか否か。 時代は幕末、主人公は東北の小藩の下級武士、三村新之丞(木村拓哉)。彼は城内の毒見役の一人としてわずかな収入で妻の加世(檀れい)と共につつましく暮らしていたが、あるとき事故で失明してしまう。城にも通えなくなり、暮らしが徐々に立ち行かなくなる中、それを見越した有力者の島田(坂東三津五郎)は、かねてから狙っていた加世に近づいていく。 卑劣な上司から、愛する家族にひどい仕打ちを受けた男が、まったく勝ち目
『007/カジノ・ロワイヤル』80点(100点満点中) リアル志向のスパイ映画に立ち返り大成功 英国の紳士的なスパイの活躍を描く『007シリーズ』は、これまで色々なやり方でマンネリ打破に挑んできた。それは007が、イアン・フレミングによる原作からの根強いファンを多く抱えるとはいえ、すでに年間有数のビッグバジェットシリーズとなった以上、その期待にこたえつつも、常に若い新しいファンを取り込んでいかねばならない宿命にあるからだ。オジサン相手の古臭い古典と思われたら、そこでシリーズの命運は尽きるのだ。 そのため、主人公のジェームズ・ボンド役を数作ごとに変更、リフレッシュしたり、話の展開を派手にするなど様々な試みが行われた。しかし、ボンドが宇宙にまで進出したり、VFX満載で人間離れした動きを見せるアクションシーンは、スパイムービーとしての本質を大きく逸脱しており、主演俳優の変更とてその手法自体がマン
『イカとクジラ』75点(100点満点中) あまりに鋭すぎる人間観察眼、そして心温まる結末 タイトルから内容がまったく想像できない映画だが、アカデミー脚本賞にノミネートされるなど、その細やかな人間描写が米国で高く評価された一本。万人向けではない内容だから公開規模も小さいが、その質の高さから私も強くこの作品を買っている。 舞台は1986年のニューヨーク。主人公一家は、夫婦ともに作家。しかし、脚光を浴び始めた妻(ローラ・リニー)に対し、夫(ジェフ・ダニエルズ)は現在まったくなかず飛ばず、長いスランプに陥っていた。しかしかつての栄光のせいでプライドだけは異様に高く、彼女を認めてやることができない。やがて二人は離婚、父に心酔する息子ウォルト(ジェシー・アイゼンバーグ)と、母親っ子のフランク(オーウェン・クライン)を巻き込み、家族は真っ二つに分かれてしまう。 この4人の心理を徹底したリアリティで描く優
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く