本題の前に。 わたしの感覚では、表記が“ヴェネチア”だと舌足らずな気がするのだが。 せっかくなら“ヴェネツィア”と書いて欲しい。 ※※※※※※※※※※※※ この作品は、言うなれば、 ――ヴェネツィアに対するのぼせあがった恋文。 で、言いつくせると思うのだけど。 いや、別に非難はしていませんよ。ここまで愛せるというのは幸せなことだ。 ただ、あまりにも情熱的すぎて、傍で見ているとちょっと照れくさいほど。 それでつい、苦笑してしまう。 でもこの人の「分身」を読んでヴェネツィアへ行きたくなったんだから、 その熱は確実にわたしにも働きかけた。 「分身」は小説だが、この作品はそれとはだいぶ趣が違う。 こちらはちょうど詩と散文の中間くらいに位置しており、軽くて読みやすい。 ほとんどの章(?)に誰それへ、という献辞があるので、ある意味書簡としても読める感じ。 詩人が書く恋文なんて、変に技巧が目立った、言葉