旧制学位論文の劣化と今後の保存対策について —国立国会図書館所蔵資料の保存状況調査より— 井口 治 1. 研究の目的 国立国会図書館(以下NDLという)が所蔵する旧制学位論文は、通常の出版物と異なり、著者が作製した手稿資料のため、構成される紙の種類や記録方法は多様である。そのため、その劣化状況や保存対策は個別に講じる必要がある。 この研究では、旧制学位論文について保存状況や保管環境等の調査を行い、今後の保存対策について考察を行う。 2. 旧制学位論文の保存状況調査 NDLが所蔵する旧制学位論文から無作為に標本抽出し、調査を行った。 NDL所蔵旧制学位論文総数 74,583件(推定) 標本抽出数 600件 旧制学位論文は複数の論文から構成されるものが多いが、学位授与単位で集計を行った。 調査の結果、旧制学位論文の保存状況について、主なものとして以下のことが