東京都江戸東京博物館様が所蔵するコレクションのうち、「馬込家文書」52点の保存修復処置をお引き受けする機会を得た。資料の内訳は、冊子32点、絵図1点、状物17点、型紙2点である。大半の資料は紙力が十分に保たれており、概ね良好な状態だったが、なかには著しい虫損や老け、糊離れが進み、元の形態を保持していないものもあった。今後の展示や公開の際に支障をきたさないよう、所蔵者様と適宜協議を重ね、適切な処置方針を検討しながら実際の処置を行った。以下、その概要を掲載する。処置を行った資料については、3. 処置対象資料を参照。 1. 冊子の処置 資料の状態 版本や写本などの冊子資料32点。装丁の形態は、紙縒りの結び綴じのものが21点、四つ目綴じのものが9点、その他の糸綴じのものが2点。紙縒りの結び綴じのうち、『四谷御伝馬金請取帳』、『御頼談書(年賦上納金・引越入費金など借用につき)』、『副書(勝手向改革に