──医学界は宗教団体なのですか。 日本の医学界はいわば宗教団体なのだ。たとえば「血圧を下げればいい教」「血糖値を下げればいい教」「がんは切ったほうがいい教」という宗教が跋扈(ばっこ)している。宗教だから必ずしも間違っていることを言っているわけではない。問題は、私にはそれぞれエビデンス(科学的根拠)がほとんどないとしか思えないことだ。普通にいわれる根拠はほぼ二つ。一つは海外のデータ、もう一つは動物実験の結果だ。 ──エビデンスがない? 薬を飲んだときに血圧が下がる、血糖値も下がる、あるいはコレステロール値が下がる。これは化学反応だから、ある程度、薬理を知っていればその種の薬はできる。エビデンスとなるには、その薬により死亡率を下げた、あるいは脳卒中を減らしたといったエンドポイント(治療行為の評価項目)を5年後や10年後にきちんと実現しないとならない。日本ではその評価がなされず、外国のデータを流