“教育問題”には大きく2つの課題があります。1つは制度に関するものです。教育を受けられる・受けられないということが、その後の社会的不平等をもたらせています。“格差”がもたらす教育機会の不平等という“教育問題”です。もう1つは教育内容に対するものです。どのような教育を行うべきか、というものです。 ではこの本で泉谷さんが問いかけたのはどのようなことなのでしょうか。それはこの両者を越えて“教育そのもの”に向けられたものです。 ──現代において、この人間存在の基盤を成す「考える」ことそのものが、大変な危機に瀕している。現代のわれわれを取り巻いているさまざまな問題の根底には、「思考停止」というおぞましい状態が押し並(な)べて認められるのである。── 情報を集めても「既存の価値観」に当てはめているだけでは「考える」ことにはなりません。「知識」があっても「思考」がなされていません。ましてや「記憶力」とい