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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (27)

  • 寄生獣、鋼錬、攻殻、進撃、火の鳥…SF×倫理学で現代を理解する『SFマンガで倫理学』

    かけがえのない自然を守るため、人を減らすのは悪か? 合成獣の生成と命の再生は「命を弄ぶ」観点からどんな違いがあるのか? みんなの健康のためなら「何をしても」許されるのか? マンガを読んでいて、こうしたテーマにぶつかることがある。たいていは主人公に問いの形で突きつけられ、何らかの「選択」が迫られる。信念に則り選ぶこともあれば、状況に追われやむをえず選ばされることもある。物語は進む一方で、読者のわたしは「もやもや」に襲われる。 「ほんとうにそれで良かったのか?」という問いだ。 わたし個人が、この問いに答えようとすると、ああでもない、こうでもないとグルグルとあてもなく考え、思考は深まりも広がりもしない。考える道具立てが無いからだ。 何が善くて、何が悪いのか?こうした問いに、真正面から取り組むのが、倫理学だ。倫理学の歴史は古く、それこそ人類が「考える」ことを始めたときから誕生したといっていい。考え

    寄生獣、鋼錬、攻殻、進撃、火の鳥…SF×倫理学で現代を理解する『SFマンガで倫理学』
  • 1冊の単語帳を1127日かけて2周したら語彙力が1万2千語になった

    「英文がスラスラ読めるようになりたい」私の切実な願いに、読書猿さんは言い放った 「まず2万語な!」 ――― 6年前の話 だ。 藁にもすがる思いで手を出したのがこれ。1127日かけて2回読んだ。結果は次の通り。 7870 words 始める前 9944 words  1周目(610日)完了後 12509 words  2周目(517日)完了後 語彙力は preply でテストした。 語彙力が増強されていることが数字で分かるが、あまり驚きはない。この『Merriam-Webster's Vocabulary Builder 』は、250もの語根や語幹をベースに単語を解説する単語帳で、私の英語力で背伸びして読めるレベルなので、そりゃ2回も読んだら強くなるわな、と思う。 それよりも、3年も続いたことに驚いている。 学校を卒業してから、英会話学校へ通ったり(1ヶ月で挫折)、通信講座を受けたり(2ヶ月

    1冊の単語帳を1127日かけて2周したら語彙力が1万2千語になった
  • 人事制度の脆弱性を衝いて給料UPする『人事制度の基本』

    年収を上げる」と検索すると、ずらり転職サイトが並ぶ。ライフハック記事の体裁だが、最終的には転職サイトに誘導する広告記事だ。 しかも見事なまでに中身がない。転職しないなら、「副業を始める」とか「スキルアップする」といった誰でも思いつきそうなトピックを、薄ーく書きのばしている。 ここでは、もう少し有益な書籍を紹介する。想定読者はこんな感じ。 スキルアップはしてるけど、給料UPにつながらない 転職も考えたが、今の場所で評価されたい 自分をプレゼンして「良く見せる」のがヘタ そんな人に、2つのアプローチで給料を上げる方法を紹介する。 人事制度の脆弱性をハッキングする 上司のバイアスを逆に利用させてもらう この記事は1のアプローチから攻める。 紹介するはこれだ、『この1冊ですべてわかる 人事制度の基』(西尾太、日実業出版社)。 著者は人材コンサルタント。400社、1万人以上をコンサルティング

    人事制度の脆弱性を衝いて給料UPする『人事制度の基本』
  • 『百年の孤独』をみんなで読むと100倍面白い

    ガルシア=マルケス『百年の孤独』は、何度読んでも面白い。 私の記憶力の無さと、再読までに積んだ経験によって、読むたびに面白いと感じるポイントが変わっていく。は変わらないのだから、再読による発見は、自分の人生の厚みが変わったためなのだろう。 さらに、この小説を楽しんだ人の感想を聞くと、十人十色で面白い。私に近い人もいれば、予想外のところにハマった人もいる。アウト・オブ・眼中の所にのめり込んだ人の話を聞くと、「なるほどなぁ!」と新鮮に読め、一冊で二度も三度も楽しめる。 小説なんだから好きに読めばいい。 引っ掛かった描写。伏線に見えるセリフ。湧き上がるイメージと、それに結びついた自分の読書経験と実人生の体験。学校じゃないんだから、「正解」なんてものはなく、「ぼくのかんがえたさいきょうの読解」の多様性を楽しむといい。 そんな皆さんの感想を伺うべく、『百年の孤独』の読書会に行ってきたので、レポート

    『百年の孤独』をみんなで読むと100倍面白い
  • 死ぬときに思い出す傑作『イギリス人の患者』

    死ぬときに思い出す小説の一つ。 あれを読めば良かったとか、これがまだ途中だったとか、未練は必ずあるはずだ。どんなに読んでも足りることはないから。そんな後悔の中で、エピソードや描写を思い出し、読んでよかったと言える作品の一つが、『イギリス人の患者』だ。 映画が公開されたときだから、20年以上前に読んだのだが、いま再読しても美しい。詩的で情緒豊かに紡がれる、四人の男女の破壊された人生の物語だ。 あらすじはシンプルだ。 第二次世界大戦の終わり、イタリア北部の半ば廃墟となった修道院が舞台となる。そこで生活を共にするのは、看護婦のハナ、泥棒のカラヴァッジョ、インド人の工兵のキップ、そしてイギリス人の患者となる。人生のわずかな期間にすれ違う男女が、自身の半生を思い出す。 ただし、けっして読みやすい、ストレートなお話ではない。 時系列は無警告で前後するし、エピソードの粒度や解像度はバラバラだ。後になって

    死ぬときに思い出す傑作『イギリス人の患者』
  • 「ミスを罰する」より効果的にミスを減らす『失敗ゼロからの脱却』

    ミスや失敗をなくすため、ヒューマンエラーに厳罰を下すとどうなるか? 一つの事例が、2001年に起きた旅客機のニアミス事故だ。羽田発のJAL907便と、韓国発のJAL958便が駿河湾上空でニアミスを起こしたもの。幸いにも死者は無かったものの、多数の重軽傷者が出ており、一歩間違えれば航空史上最悪の結果を招いた可能性もあった。 事故の原因は航空管制官による「便名の言い間違い」にあるとし、指示をした管制官と訓練生の2名が刑事事件に問われることになる。裁判は最高裁まで行われ、最終的には2名とも有罪となり、失職する。判決文にこうある。 そもそも、被告人両名が航空管制官として緊張感をもって、意識を集中して仕事をしていれば、起こり得なかった事態である [Wikipedia:日航空機駿河湾上空ニアミス事故] より 芳賀繁『失敗ゼロからの脱却』は、これに異を唱える。 事故は単一の人間のミスにより発生するので

    「ミスを罰する」より効果的にミスを減らす『失敗ゼロからの脱却』
    kiyokono
    kiyokono 2024/06/16
  • なぜ、あの人は、あやまちを認めないのか?

    「謝ったら死ぬ病」をご存知だろうか? どんなに証拠を突き付けても、絶対に非を認めない人だ。 プライドの高さや負けず嫌いといった性格的なものよりもむしろ、過ちを認めることが、自分の命にかかわるものだと頑なに信じている。すなわち、「謝ったら死ぬ」という病(やまい)に取り憑かれている―――そんな人がいる。 もちろん、想像力が衰えて視野が狭く、無知な自分を認めたがらないような頑固者なら、可哀そうに思えども理解はできる。 だが、第一線で活躍する知識人や学者で、ものごとを客観視できるはずなのに、この病気に罹っている人がいる。それどころか、その優れた知性を用いてコジツケを考えだし、論理を捻じ曲げ、のらりくらりと言い逃れる。 なぜ、あの人は、あやまちを認めないのか? ずばりこのタイトルの書を読んだら、疑問が氷解した。 それと同時に、「謝ったら死ぬ病」は私も罹患していることが分かった。「あの人」ほどは酷く

    なぜ、あの人は、あやまちを認めないのか?
  • 認知言語学から小説の面白さに迫る『小説の描写と技巧』

    小説の面白さはどこから来るのか? 物語のオリジナリティやキャラクターの深み、謎と驚き、テーマの共感性や描写の豊かさ、文体やスタイルなど、様々だ。 小説の面白さについて、数多くの物語論が著されてきたが、『小説の描写と技巧』(山梨正明、2023)はユニークなアプローチで斬り込んでいる。というのも、これは認知言語学の視点から、小説描写の主観性と客観性に焦点を当てて解説しているからだ。 特に興味深い点は、小説の表現描写が、人間の認知のメカニズムを反映しているという仮説だ。私たちが現実を知覚するように、小説内でも事物が描写されている。 認知言語学から小説の描写を分析する 通常ならメタファー、メトニミーといった修辞的技巧で片づけられてしまう「言葉の綾(あや)」が、ヒトの、「世界の認知の仕方」に沿っているという発想が面白い。これ、やり方を逆にして、認知科学の知見からメタファーをリバースエンジニアリングす

    認知言語学から小説の面白さに迫る『小説の描写と技巧』
  • うんこを限界までガマンしたことがある人たちと、限界を突破した悲しみを知る全ての人たちに贈るアンソロジー『うんこ文学』

    うんこを限界までガマンしたことがある人たちと、限界を突破した悲しみを知る全ての人たちに贈るアンソロジー『うんこ文学』 大人になってから、うんこを漏らしたことがあるだろうか? 私はある。 が「彼女」だった頃、同棲先の彼女のマンションで漏らした。西友で買い忘れたものがあるという彼女を残して、鍋の具材を運んでいたときだ。 お腹の調子が悪かったのは覚えている。体の中心に熱泥が吊り下がるような感覚があった。西友のトイレを使わせてもらえばよかったことも覚えている。 だが、間に合うだろうと考えていた。目算を誤らせたのは、材の重さによる移動速度の低下と、彼女のマンションまでの道のりである。一緒に暮らし始めて間もないため、道を間違えたのだ。 真冬にも関わらず脂汗を流し、全身の筋肉を一点に集中させ、そのことだけは許されまいという思考だけが頭を支配し、奇妙にねじくれた足取りで、走るな、走れば破局だと言い聞か

    うんこを限界までガマンしたことがある人たちと、限界を突破した悲しみを知る全ての人たちに贈るアンソロジー『うんこ文学』
  • システム開発に銀の弾丸はないが「金の弾丸」ならある『人が増えても速くならない』

    例えばソフトウェア開発において、 人が増えても納期が短くなるとは限らない 見積もりを求めるほどに絶望感が増す 納期をゴリ押すと、後から品質はリカバリできない これを見て、「だよねー」「あるあるw」という人は、書を読む必要はない。 プログラミングは人海戦術で何とかならないし、「厳密に見積もれ」というプレッシャーは見積額を底上げするし、納期が優先されて切り捨てられた品質は、技術的負債として残り続ける。経験豊富なエンジニアなら、大なり小なり、酷い目に遭ってきただろうから。 だが、これらを理解できない人がいる。 要員を追加して、手分けしてやれば一気に片付くはず 厳密にやれば、見積りバッファーはゼロにできる 品質のことはリリース後にじっくりやればいい ……などと気で考えている。これは、ソフトウェア開発とはどういうものか、特性を知らないからだ。こんな無知な人間が経営層にいたり、顧客の代表となった場

    システム開発に銀の弾丸はないが「金の弾丸」ならある『人が増えても速くならない』
  • ルーク・スカイウォーカーの初登場までに17分もかかった理由『脚本の科学』

    面白い物語の法則として「主役はできるだけ早く登場させて印象づけろ」というものがある。 にも関わらず、最初の『スター・ウォーズ』はこのルールを破っている。小さな宇宙船を追跡する超大型戦艦から始まり、悪の親玉に捕まるお姫様を描き、辛くも脱出するロボットのコンビを描く。 メイン・キャラクターであるルーク・スカイウォーカーが出てくるのは、映画が開始して17分が経過してからになる。 一方、『スター・ウォーズ』のオリジナルの脚では、4ページ目からルークが紹介されるシーンがある。ほぼ冒頭から登場するのだが、このシーンは映画に入っていない。脚家のジョージ・ルーカスは慣習に従ってルークを冒頭で出しているが、監督のジョージ・ルーカスはそうしなかった。 なぜか? 様々な説が考えられるが、『脚の科学』によると、「その必然性が無かったから」になる。 いきなり始まる怒涛のバトル&追跡劇で息つく暇もない観客は「逃

    ルーク・スカイウォーカーの初登場までに17分もかかった理由『脚本の科学』
    kiyokono
    kiyokono 2023/05/27
  • 千夜一夜物語レベルの面白さ『サラゴサ手稿』

    この世でいちばん面白い物語は、『千夜一夜物語』だ。面白さのエッセンスを煮詰め、淫乱で低俗な世界に咲いた気高く美しい枠物語だ。 この世でいちばん面白いファンタジーは、『氷と炎の歌』だ。エロとグロと波乱と万丈と冒険と怪奇の群像劇だ。 この世でいちばん面白い小説は、『モンテ・クリスト伯』だ。究極のメロドラマであり、運命と復讐の逆転劇だ。 そして、『サラゴサ手稿』は、面白さのエッセンスを煮詰めた枠物語であり、エログロ波乱万丈の群像劇であり、究極のメロドラマである。惜しむらくは全三巻と短く、気のすむまで狂ったように読み続けることはできぬ(その点、千夜一夜は全11巻なので延々と没入できる)。 しおり無用の面白さだが、一気に読ませぬ迷宮が仕掛けてあるのでご注意を。ひとたび頁を開いたら最後、物語の物語の物語の中に入り込み、ストーリーのダンジョンを行ったり来たり、延々と彷徨うことになる。 説明する。 『サラ

    千夜一夜物語レベルの面白さ『サラゴサ手稿』
    kiyokono
    kiyokono 2023/04/09
  • 未来を既読にする一冊『SF超入門』

    治療法がない疫病の感染者に、人は、どれだけ残酷になれるか。脅威を恐怖として煽るマスコミのせいで、防疫と差別を取り違える輩が登場し、およそ人とは思えないような残酷なことを平気で実行する。 「健康」が義務化され、不健康であることが罪となる社会では、自分の体を自分で自由にすることすらできない。健康が強制される管理社会において、最終的に支配する対象は「心」になる。 現代日の話ではなく、サイエンス・フィクションの話をしている。 物語であるにも関わらず、恐ろしいほど「いま」「ここ」を示している。コロナ差別や、背番号で健康管理をする時代のずっと前に、作品は世に問われ、エンタメの形で消費されてきた。 だから、物語が現実の形で登場するとき、「ああ、これは読んだことがある」と気づくことができる。目の前で進行する出来事に対し、「これは履修済み」として受け止めた上で、その物語を比較対象にしながら、是非を検討でき

    未来を既読にする一冊『SF超入門』
  • しなくていい失敗を回避する『プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本』

    プロジェクトマネジメント(PM)の重要性は、あまり認知されていないように見える。 うまく回っているときは「あたりまえ」扱いでスルーされ、いざ暗礁に乗り上げたときに「どうなってるんだ!?」と糾弾の的となる。 プロジェクトをうまく回していくコツというか勘所は確かにあり、相応のトレーニングが必要だ。にもかかわらず、なぜか蔑ろにされている。ろくに訓練もしないまま、「見て学べ」「やって覚えよ」と実践に放り込み、メンタルをやられず生き延びた者が幹部になる。 これは悪手だ。 よく、「失敗から学ぶほうがより身につく」などと唱える輩がいるが、しなくていい失敗は避けたほうがいいに決まってる。そして、この「しなくていい失敗」のほとんどは、基を押さえるだけで回避できる。 この、PMの基を押さえているのが書だ。 『プロジェクトマネジメントの基が全部わかる』には、プロジェクトを回していくために「あたりまえ」

    しなくていい失敗を回避する『プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本』
    kiyokono
    kiyokono 2023/01/08
  • ファンタジーの最高傑作『氷と炎の歌』

    夢中にさせて寝かせてくれず、ドキドキハラハラ手に汗握らせ、呼吸を忘れるほど爆笑させ、ページを繰るのが怖いほど緊張感MAXにさせ、いしばった歯から血の味がするぐらい怒りを煽り、思い出すたびに胸が詰まり涙を流させ、叫びながらガッツポーズのために立ち上がるほどスカッとさせ、驚きのあまり手からが転げ落ちるような傑作がこれだ。 この世でいちばん面白い小説は『モンテ・クリスト伯』で確定だが、この世でいちばん面白いファンタジーは『氷と炎の歌』になる。 書いた人は、ジョージ・R・R・マーティン。稀代のSF作家であり、売れっ子のテレビプロデューサー&脚家であり、名作アンソロジーを編む優れた編集者でもある。 短篇・長編ともに、恐ろしくリーダビリティが高く、主な文学賞だけでも、世界幻想文学大賞(1989)、ヒューゴー賞(1975、1980)、ネビュラ賞(1980、1986)、ローカス賞(1976、1978

    ファンタジーの最高傑作『氷と炎の歌』
  • 時を忘れる小説

    大きな現実の前では、文学はつくづく無力だな。 そも文学は人と人との間学(あいだがく)なのだから、人を超える圧倒的な事物には、術がない。しかし、言葉が人に対して影響をもつものなら、それがいかに微かであろうとも、その力を信じる。わたしは、物語の力を、信じる。 このエントリでは、時を忘れる夢中小説、徹夜小説を選んでみた。計画停電でテレビや電車が動かないとき、開いてみるといいかも。amazonからは書影のみお借りして、リンクはしていない。自分の書棚か、営業してる屋を巡ろう。文庫で、手に入り安そうなもので、かつ面白さ鉄板モノばかり選んだ。いま手に入りにくいのであれば、手に取れるようになったときの「おたのしみリスト」として期待してくださいませ。 ■大聖堂(ケン・フォレット、ソフトバンククリエイティブ) 十二世紀のイングランドを舞台に、幾多の人々の波瀾万丈の物語……とamazon評でまとめきれないぐら

    時を忘れる小説
    kiyokono
    kiyokono 2022/11/19
  • 炎上プロジェクトの火消し術『プロジェクトのトラブル解決大全』

    飛び交う怒号、やまない電話、不夜城と化した会議室。 集められたホワイトボードが衝立のように立ち並び、全員が立って仕事をしている(座る間が無いから)。週をまたぐとメンバーの疲弊が目に見えはじめ、月を跨げば一人二人といなくなり、仕事場はお通夜となる。 トラブルの無いプロジェクトは存在しない。炎上するかボヤで済むかの違いなだけで、大なり小なりトラブルは付きものである。 自分が所属する部署は大丈夫かもしれない。だが、隣のブースだとか、同期がいるチームで炎上しているのを横目で見ながら仕事する、なんてことがある。ホワイトボードは目につくし、大きな声はイヤでも耳に入ってくるので、プロジェクト炎上⇒鎮火するパターンなんてものも、なんとなく伝わってくる。 消火作業のイロハとか、怒った客をあしらう方法、リカバリ計画の立て方なんてのも、肌感覚で分かってくる。 そして、トラブルの扱いが分かってくる頃には、「応援

    炎上プロジェクトの火消し術『プロジェクトのトラブル解決大全』
  • 寝る前の眠れなくなるボルヘス『記憶の図書館』

    「もし愛だと言われなければ、抜き身の剣と思ったことだろう」 ボルヘスが記憶の底から汲み出したセリフだ。キプリングの短篇に出てきたという。驚くべき言葉だ。この一行は、私に<届いた>。 ボルヘスは続ける。驚くべきは形式だと。 もし、「愛は剣のように容赦がない」と直喩で言ったなら、何も言ったことにならない。あるいは、愛を武器に喩えたとしても同様になる。もちろん、愛と抜き身の剣を取り違える人なんていない。 ただ、ありえない混同が、想像力にとってありえるものになり得る。しかも、文の構造のおかげで、混同が起こっている。なぜなら、「最初はそれを剣だと思ったが、やがて愛なのが分かった」と言っても馬鹿馬鹿しいものになる。 確かに、ボルヘスの指摘する通りだ。このセリフは、このシンタックスでないと成立しない。ちょっとでも言い換えたり、構造をいじっても、私には届かなくなる。「もし愛だと言われなければ、抜き身の剣と

    寝る前の眠れなくなるボルヘス『記憶の図書館』
  • この本がスゴい!2021

    「後で読む」は、あとで読まない。 「後で読む」は、あとで読まない。 「試験が終わったら」「今度の連休に」「年末年始は」と言い訳して、結局読まなかった。「定年になったら読書三昧」も嘘になるだろう。そもそも、コロナ禍で増えた一人の時間、読書に充てたか?(反語) だから「いま」読む。 たとえ一頁でも一行でも、目の前の一冊に向き合う。いま元気でも、一週間後には、読めなくなるかもしれないから。 今年は、死を意識した一年でもあった。「やりたいこと」を先延ばしにしてるうちに、感染して望みが断たれる可能性が爆上がりした。 時の経つのは早い。人生が長いほど、一年は短くなる。体感時間は加速する一方、人生の可処分時間は、短くなる。 だから「いま」読む。 積読を自嘲したりマウント取るのもヤメだ。いま読まない理由を並べ立てて開き直る不毛も捨てよう。そして、ずっと取っておいた、とっておきのを、いま読む。 そんなつも

    この本がスゴい!2021
    kiyokono
    kiyokono 2021/12/01
  • 原文で読むからこそ味わえるヘミングウェイの文章の味『ヘミングウェイで学ぶ英文法』

    正直に告白すると、ヘミングウェイは苦手だった。 簡潔で、説明不足で、ぶっきらぼうな文体だったから。 しかし、このを読んで、考えが変わった。 例えば、”Cat in the rain” における、雨宿りをしている子を見かけたが、夫に告げるシーンだ。 “I’m going down and get that kitty,” the American wife said. “I’ll do it,” her husband offered from the bed. “No, I’ll get it. The poor kitty out trying to keep dry under a table.” 書の解説で、「現在進行形(I’m going)と will の違いが分かりますか」と問いかけられる。 え? be going ~って、結局、『~するつもり』だから、will と一緒で

    原文で読むからこそ味わえるヘミングウェイの文章の味『ヘミングウェイで学ぶ英文法』
    kiyokono
    kiyokono 2021/04/18