'97年に食道がんで亡くなった随筆家の江國滋は、闘病日記『おい癌め 酌みかはさうぜ秋の酒』のなかで、がん治療が続く暗澹たる気持ちをこんな句で表現している。がん患者の苦しみは、いかばかりのものか、たったの17音からでも十分に伝わってくる。 がん手術の技術は日々進歩し、100種類を超える抗がん剤も登場している。がんの多くは手術や薬によって治療が可能、あるいは進行を遅らせることができる時代だ。それでも、治療を止めてしまう人、治療を受けないと決めた人がいる。 「抗がん剤治療をやめてもうすぐ1年になります。あのときのつらさは、筆舌に尽くしがたいものがありました」 こう話すのは『おしん』や『ゲゲゲの女房』など数多くのドラマに出演してきた女優の東てる美さん(63歳)だ。 東さんは、昨年6月に出演したバラエティー番組の企画で人間ドックを受診したところ、肺腺がんと診断された。ステージはIB。「いま手術をすれ