『生命起源論の科学哲学』(クリストフ・マラテール著、みすず書房)を読む。 非生命と生命の間には架橋しがたい溝があるのか。あるとすれば非生命から生命の誕生は”創発”と呼ばれる現象なのか。古くから論争されてきた問題に対して、最近の科学的知見もレビューしつつ、この論争で問題となる「創発」という概念を精緻化することに取り組んだ本。最初は生命の定義を通覧したあと、「構成成分を産生する自分自身の内部的な過程と、外部のエネルギーや物質の利用によって、自立的に維持するシステムである」という定義により議論をすすめることを宣言する。次いで生命の起源論について紹介するが、不明なことが多いので決定的なことは分からないとした上で、創発についての歴史を振り返り、いよいよ第5章から本格的な創発の哲学的概念が検討される。共時的な創発と通時的な創発、認識論的および存在論的側面があるとした上で、3種類の創発の定義(ブロード、