「こんなはずじゃなかったんです。こんなはずじゃ……」 細く痩せた両手で敷き布団のシーツをギュっと握り締めながらヨネ子さんは「わぁ~!!」と泣き崩れてしまいました。ヨネ子さんは、1日のほとんどをこの畳に敷いた布団で過ごしています。 窓の外はジリジリと太陽が照っていて蝉が勢いよく鳴いているのに、ヨネ子さんの部屋だけは季節を忘れたように薄暗く少し湿り気がありました。 筆者が訪問介護の仕事をしていた時代に担当していたのが、このヨネ子さん(仮名、当時76歳)で、暑くなる今頃の季節になると、必ずと言っていいほどヨネ子さんのことを思い出します。 自慢の家族がいなくなり軽度のうつに ヨネ子さんは3年前にご主人を亡くし、都内の戸建てに1人暮らしをしていました。 ご主人は生前、国内だけでなく海外でもとても有名な科学者でした。息子さんも2人いますが、2人ともエリート街道まっしぐら。大学はアメリカの名門校へ進み、