東京電力の元幹部に、福島第一原発事故の責任を問う刑事裁判。「山場」とされる被告人質問で、武藤栄・元副社長は責任逃れに終始した。 【写真】廃炉に向けた作業が続く東京電力福島第一原発 * * * 10月16日、被告人質問の冒頭。東京電力元副社長の武藤栄氏(68)は証言台の席から立ち上がり、「大変多くの方々にご迷惑をおかけした」と、裁判長に向かって4秒ほど頭を下げた。福島から傍聴に来た人たちに尻を向けておじぎする姿は、とても奇異に感じられた。一体、誰に何をわびたのだろう。 公判の間中、武藤氏は落ち着きがなかった。腕を前に出して証言台をつかんだり、話しながら腕を振ったりと体を動かし続けた。検察官役の指定弁護士の質問に答える時は、ときおり頬を紅潮させてもいた。 東京地裁で最も大きな104号法廷の傍聴席は98席。一般傍聴者の抽選倍率は、16日5.8倍、17日4.5倍と世間の関心は高かった。 東電福