tiny pop。タイニーポップ。実体はよくわからないし明確な定義も存在しない、アドホックな命名である。どうやらしょぼいポップスのことを指すらしい。正確に言えば「明確にポップス構造を持った、しかし小さくささやかな音楽」のことだという。tinyという言葉を使うのは「しょぼい」という言葉のネガティブなイメージを払拭するためなのだろう。あえてtiny popと書いている(ライターの天野龍太郎氏の提案による)のも記号的に面白い。 僕はtiny popを生活者による音楽として捉えている。しかもそれはジャンルというよりは音楽の捉え方や哲学に近い。普段は別の生活を営みながらも、音楽に対する限りなく大きなエネルギーを抱えた人たちが作り出す音楽。その表現は必然的に生活感覚や現実逃避になる。いわゆるシティポップも都市生活者またはその憧憬を指向したものであったし、癒やしの表現としてリゾート的逃避も確かにあった。
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