ペンギン・ハイウェイ [著]森見登美彦[掲載]2010年7月18日[評者]田中貴子(甲南大学教授・日本文学)■未知なるものに分け入る少年 郊外に住む小学4年生の「ぼく」は、まだ海を見たことがない。なのに、街には突然ペンギンが出没する。どうやら歯科医院の「お姉さん」がその現象にかかわっているらしい……。 京都も大学生も出てこない本書は著者の「新境地」と評されているが、それは当たらない。著者の今までの小説は京都の実体を描いたわけではなく、著者の作り出した「世界」がたまたま京都だったにすぎないからだ。今回も、たとえモデルになる場所があったとしても、著者が郊外という「世界」を作り上げたのだといえよう。 少年はその街で不思議な現象に遭遇し、その謎について研究する。それは、死、とか、世界の果て、といった未知なるものを探検することであり、彼の成長を瑞々(みずみず)しく、またせつなく語るエピソードとなって
本の目利き 151人のベスト5[掲載]2010年4月4日 「ゼロ年代の50冊」はアンケートで選びました。新聞や週刊誌で書評を執筆している方に、2000〜09年の10年間に出た本の中からベスト5を挙げていただきました。317人にお願いし、151人から回答が寄せられました。ベスト5を5点〜1点と点数化し、順不同はそれぞれ3点で集計しました。 ジャンルを問わず挙げてもらったため、ノンフィクション、小説、評伝など作品の範囲は多岐にわたりました。タイトルが挙がっただけでも約620冊にのぼります。 表で紹介した50冊のほかにも、たとえば小説で、安岡章太郎著『鏡川』(新潮社)や大江健三郎著『さようなら、私の本よ!』(講談社)などが挙げられました。評伝では複数の方が岡村春彦著『自由人 佐野碩の生涯』(岩波書店)を推しています。演劇評論家の扇田昭彦さんは「軍国主義下の日本を逃れ、ソ連を経て亡命先のメキシコで
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