ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (17)

  • 読書猿『問題解決大全』はスゴ本

    一生役立つ一冊。 これ、言い切っていいと思うが、わたしが直面するあらゆる問題は、検討済みである。 新しい問題なんてものはない。「問題」をどの抽象度で定義するかにもよるが、新しく「見える」だけで、分析してみれば、分解してみれば、裏返してみれば、再定義すれば、古今東西の人たちがすでに悩み、検討し、着手し、対処してきた問題であるにすぎぬ。 ただし、対応する人にとってみれば、それは新しい問題である。または、初見の状況に直面することもある。だが、人や状況が違えども、問題そのものは、ほどいてみれば、既出なのだ。新しい状況下で、新しい人が、既出の問題を解き直しているといえる。 そして、問題を解決するための方法もまた既出である。わたしが知らないだけで、古今東西の人たちがすでに考え抜いている。ある手法は学問分野になっていたり、またある方法はライフハックやビジネスメソッドになっていたりする。規制や法制度化され

    読書猿『問題解決大全』はスゴ本
    kohmota
    kohmota 2017/11/28
  • 『土木と文明』はスゴ本

    土木から見た人類史。めちゃくちゃ面白い。 土木工学とその影響という切り口で世界史を概観する。テーマは、都市、道路、橋、堤防、上下水道、港湾、鉄道などに渡り、テーマごとに豊富な事例で紹介する。土木技術の発展なしには文明も発達せず、また文明の発展につれて土木技術も発達してきた。そうした土木工学と文明の関わりを歴史的に串刺しで見ることができる。 大きなものから小さなものまで、人が手がけてきた土木事業は、それこそ星の数ほどある。それをどうやって整理するか。書は、そのとき直面した問題(治水、防衛、流通、疫病対策等)と、利用できるリソース(人・技術・時間)、そして成し遂げられた結果(土木事業)という観点で整理しているのが素晴らしい。 面白いことに、問題と対策という視点で眺めると、時代や地域を超えた普遍性が現れてくる。異なる時代・地域の人々が、それぞれに知恵を絞り、そのときに手に入るリソースを駆使した

    『土木と文明』はスゴ本
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    kohmota 2017/09/01
  • 『すごい物理学講義』はガチで凄かった

    スゴとは「凄い」の略だ。読前読後で世界が改変されてしまうだ。 もっと言うと、世界が変化するのではなく、世界を視る「わたし」が更新される。『すごい物理学講義』は、まさにそういう一冊。わたしが知っていた世界について、その理解を深めるとともに、知識や概念として知っていた枠組みを、一変させてしまった。 書の前半は、「世界のありよう」について歴史を振り返りつつ、アインシュタインの一般相対性理論と量子力学の統合について、徐々に焦点を当てていく。ここでの面白い指摘は、「目に見えている世界」ありのままに見ることを阻むものは、われわれ側の予断であること。著者は、世界の理(ことわり)を善悪の観点から理解しようとしたプラトンやアリストテレスを挙げながら、目的論的な見方を批判する。 そして、ニュートン的世界観がどのように乗り越えられ、ファラデー、マクスウェルを経て、アインシュタインと量子力学で、時間と空間

    『すごい物理学講義』はガチで凄かった
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    kohmota 2017/07/17
  • 東大の科学がスゴい『科学の技法』

    東大の理系は、一年生から「科学の技法」を叩き込まれる。 『知的複眼思考法』を読んだとき、批判的に読み・考えるトレーニングを徹底させる東大の文系が羨ましいと思った。『科学の技法』を読んだいま、科学の技法をゼミナール形式で学べる東大の理系が羨ましい。 東大で始まった新しい試み「初年次ゼミナール理科」が凄い。 理系の一年生は全員必修で、1クラス20名の少人数を、教師+TA(ティーチングアシスタント)できめ細やかに指導する。学術的な体験(アカデミック体験)を通じて、サイエンティフィック・スキル(科学の技法)を修得することを目的としている。 この科学の技法が羨ましい。前半が「基礎編」で、あらゆる研究をする上で基礎的となるだけでなく、仕事にも必須なスキルが紹介されている。後半が「実践編・発展編」で、研究チームを意識できるようなゼミを「ラボ」として開講し、そこで基礎的な演習を行う(垂涎だらけなり)。 ◆

    東大の科学がスゴい『科学の技法』
  • わが子がイジメられてるらしいと思った親が最初にしたこと

    それは記録。 背中が痛いと訴えてくる息子を裸にしたところ、広範囲に内出血跡を見つける。詳細は省くが、殴られたらしい。「すわイジメ」と気負いたつのではなく、ゆっくりと子どもの話を聞く。度を越した悪ふざけなのか、陰湿なやつなのか見きわめがつかないし、子どもの話なので一貫性が見出しにくい。 まず、子どもの話を遮ることなく最後まで聞く。たずねるニュアンスの「訊く」のではなく受け入れるように「聞く」。そいつを逐一記録する。客観的に述べるのは難しいだろう(大人だってそうだ)、だから矛盾点には目をつぶり、ありのまま記録してゆく。ついでに写真も撮っておく。トラブルが大きくなり、収拾がつかなくなってからではなく、(たとえ一面からでもそれを自覚しつつ)子どもからヒアリングを続ける。 次に、「親は味方だ」というメッセージを伝える。独りで抱え込むなという。どうしても言いたくないのであれば、無理に聞くことはない。親

    わが子がイジメられてるらしいと思った親が最初にしたこと
  • 今すぐ使える『明日からつかえるシンプル統計学』

    まちがえるな、統計学は道具だ。統計は学ぶものではなく、使うもの。 これはわたし自身への戒言。だから、使い方を誤らない程度に理解していればいいし、そのために教科書をイチから読み込む必要も、Rをマスターする必要もない。もちろん様々な武器(統計手法)が使えるに越したことはないが、次のような問題と向き合っているなら、書をオススメする。 あと500人お客を呼び込むためには、いくら広告費が必要か? カスタードケーキがチョコパイに勝つには、「味の改良」と「販促キャンペーン強化」のどちらが有効か? クラス全体の成績が低迷している。国語と数学の両方が苦手な生徒だけ補習したほうがいいのか、全員に国語の補習をしたほうがいいのか 前任者から引き継いだデータが大量にあるが、それぞれの関係や着眼点がまとめられてない。どこから手をつければいいか? 社内のKPI(Key Performance Indicator :

    今すぐ使える『明日からつかえるシンプル統計学』
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    kohmota 2013/04/08
  • 性教育は、この一択。『ぼくどこからきたの』

    これは家で教えなきゃ、と実践しているのがと性。家庭科や保健体育では遅いし足りぬ。学校任せにしないおかげで家族の昼ぐらいは作れるようになった(ただし麺類に限る)。 では性は?探し回ったあげく、この一冊にした。 男と女の違いから始まって、セックスとは?赤ちゃんができるとは?に真正面から答えている。親子で読めて、きちんと話し合える。生々しすぎる描写ではなく、かといって抽象的すぎでもない(「プリキュアで性教育」といっても、おしべとめしべは、ほとんとメタファー)。『南仏プロヴァンスの12か月』のピーター・メイルの文を、谷川俊太郎が訳している。率直で、ごまかしのない言葉で伝えている。 一通り読み聞かせた後、性感染症の話を補足する。お風呂のとき、そこを綺麗に洗いなさいというのは、これが理由だったのか、と納得してもらう。あとは質問コーナー。山ほど出てくる問いかけに、適切な言葉を選び、分かりやすく伝え

    性教育は、この一択。『ぼくどこからきたの』
  • 「できない」を証明する知的興奮『不可能、不確定、不完全』

    「できない」を納得してもらうのは難しい。 なぜなら、あらゆる解決策を吟味して潰していかねばならないから。いっぽう「できる」ことを証明するのは簡単だ、解法を一つだけ示せばいいのだから。 たとえば、上司に「できません」と伝えると「できない理由を言え(俺が論破してやる)」と返される。無茶でも「できます」と言うほうが楽である(ただし、納期・コスト・品質そして健康が犠牲になる)。最近では小ずるく言い方を変え、「現実的ではありません」と理由を説明するようになった(これで説明責任が相手に移動する)。ビジネス上のたいていの問題は、カネか時間かで解決するが、常識的な時間内に解決するのは難しい。 ところが、世の中に、いくらカネと時間を注ぎ込んでも解決できない問題がある。荒唐無稽なファンタジーという意味で「できない」というのではなく、数学的な帰結として「できなさ」が証明されている問題である。『不可能、不確定、不

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    kohmota 2013/03/18
  • 「この世で一番おもしろいマクロ経済学」で見晴し良好

    経済音痴のわたしに最適な一冊。 そして、素朴な疑問「経済学者はバカなのか」に対する解答が得られた。その答えを言おう、経済学者はバカではない。むしろ利口な方なのに、バカと呼ばれているだけなんだ。 つまりこうだ。マクロを取り巻く知見が不安定なのは、経済の性質について相反する主張があるから(書では、経済を「円満な家庭」と見なす派閥と「崩壊家庭」と考える派が対立する)。政府の役割についての意見も違う。政府とは、成長と安定を促す「よい親」と考える人と、「悪い親」だから手出しするなと主張する人が、これまた争う。 それぞれ信じるイデオローグに固執し、互いが互いをバカ呼ばわりするからややこしくなり、岡目八目、経済学者は何なの? バカなの? という話になるのだ。書では、それぞれの「宗派」を両論併記で並べているため、一瞬混乱するかもしれない(幾度「どっちやねん!」とツッコミを入れたことか)。 だが、『そう

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    kohmota 2012/08/23
  • だれかに、なにかを、魅力的に伝える「はじめての編集」

    わたしは「編集者」だということに気づかされた一冊。 そして、より良い「編集者」を目指すことは、わたしの人生をより良い作品にしていくことなんだというメッセージが届いた「あなたの人生があなたの最高の編集物なのです」。職業としての編集者(エディター、デザイナー、プランナー)に限らず、「人生を編集したい」、そんな方にオススメ。 著者は菅付雅信、第一線で活躍する編集者だ。出版からウェブ、広告、展覧会までを手がけ、「編集」というより「企画」「デザイン」「コンサルティング」に近いクロスオーバーな役割をこなす(その仕事っぷり)。 そんな一流人が、編集の原則/質を惜しみなく開陳する。ブログを書いて、ときどきイベントを企画するわたしにとって、ありがたいエッセンスで満ち溢れている。書く対象やプランを検証する優れた手助けとなった。 たとえば、「編集とは、『だれかに、なにかを、魅力的に伝える』という目的を持った行

    だれかに、なにかを、魅力的に伝える「はじめての編集」
  • この本でタバコをやめて十年目

    最後の一を吸い終えたのが、ちょうど十年前。 やめた(やめられた)のは、子どものこととか懐具合とか健康を気にしてではなく、この一冊を読んだから。今やコンビニで見かけるほどメジャーになったが、当に、当に感謝している。文字どおり、わたしの人生を変えた一冊やね。 10年前のスペック―――文字どおりの「ヘビースモーカー」。マイルドセブンが220円だった頃から始め、マイセン系はカスタムライトまで試し、CASTERのチョコっぽさに辟易し、ピースに浮気して、結局ピースライトに落ち着いた。十年間、一日一箱を守り、さらに開高健の影響でパイプをやっていた(紙巻は肺ガンになりやすい、と信じてた)。「タバコをやめよう」なんて考えたこともなかった。タバコがない人生なんて、考えられなかった。 「読むだけでやめられる」というキャッチで惹かれて立ち読み。タバコと不可分のわたしに対する挑戦だと受け取ったから。さぞや、タ

    この本でタバコをやめて十年目
  • 子どものために、できること「40歳の教科書」

    親業の確認のつもりで読む、だいたい合ってた。 親を見て子は育つ。だから、子の努力を望むなら、まず親が努力する。「幸せ」とは何か伝えたかったら、親がイライラするのをやめる。「英語」はツールにすぎないが、「お金」の教育は重要。学校は人間関係を学ぶところだから、失敗の練習場と思え。社会に出ると、失敗は有償だぜ。 受験マンガ「ドラゴン桜」をにした「16歳の教科書」、その番外編が「40歳の教科書」になる。以下の4テーマに対し、強いメッセージ性をもつ人からのインタビュー集といったところか。一問一答に「まとめ」ると、こんなん。 英語早期教育 「もっと早く英語の勉強をしておくんだった…」 「小学校から英語なんて、破滅するぞ!」 中高一貫校 「早いうちにいい学校に入れば、あなたがラクできるのよ 「その受験で幸せになるのは、子どもじゃなくてあんただろ!」 お金仕事お金の話をするのは恥ずかしい」 「お金

    子どものために、できること「40歳の教科書」
  • 3週間でやりなおす「高校数学の教科書」

    習うより慣れろ、学ぶより真似ろ。 やりなおし数学シリーズ。いつもと違うアタマの部分をカッカさせながら、3週間で一気通貫したぞ。もとは小飼弾さんへの質問「数学をやりなおす最適のテキストは?」から始まる。打てば響くように、吉田武「オイラーの贈物」が返ってくる……が、これには幾度も挫折しているので、「も少し入りやすいものを」リクエストしたら、これになった。 書の特徴は、「つながり」。アラカルト方式を改め、高校数学の体系を一化しているという。なるほど、上巻の「数と式」の和と差の積の形に半ば強引に持ち込むテクは、下巻の積分の展開でガンガン使うし、図形と関数はベクトルと行列の基礎訓練だったことに気づかされる。ベクトルが行列に、行列が確率行列に、さらに行列がθの回転運動や相似変換に「つながっている」ことが「分かった」とき、目の前がばばばーーーっと広がり、強制覚醒させられる。 上巻 1章 数と式 2章

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    kohmota 2011/06/17
  • 努力の最適化「上達の技術」

    正しい努力の仕方。 伸び悩むアスリートや、受験勉強に苦労してる方には福音となるかも…あるいは「知ってたよ!」とウソブくかも。上達上手とは無駄な努力をしないこと。漫然と練習を重ねたり、やみくもにひたすらにガンバルだけでは、決して「最高の自分」にたどり着くことはない―――著者は警告する。むしろ、"時間"という貴重な資源のムダになりかねないという。だから、上達のルールにのっとった「正しい努力」をするべきなんだって。 では、「正しい努力」「上達のルール」とは何か。以下の8章で応える。 第1章 最高の実力をだす技術 第2章 結果をだせる練習の技術 第3章 勝負強くなる技術 第4章 集中力を高める技術 第5章 記憶の達人になる技術 第6章 高いやる気を発揮する技術 第7章 打たれ強くなる技術 第8章 創造性を発揮する技術 例えば第2章の「結果をだせる練習の技術」に、「分習法」と「全習法」が紹介される。

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    kohmota 2011/06/13
  • 愛し愛されて生きるため「上手な愛し方」

    喧嘩で怒っている嫁さんへの唯一解は、ルール32にある。 ご存知のとおり、ヒートアップした彼女に対して、「やってはいけない」ことは山ほどある。冷静に反論、誤謬の指摘は、火に油。適当に「ゴメン」で済ますなら、「当に悪いと思ってる? 」と逆ネジ喰らい、説明を求められるのがオチ。そして、説明に失敗すると、今度は火にガソリンになる。 では、どうすればよいのか? ルール32は、「自分から先にあやまる」。さっきと一緒と思いきや、まるで違う。「なにを謝るのか」が違うのだ。ホントは自分が正しいと思っているのに、「ごめん」と言うのは偽善だろう。自分の意見や行動について、謝罪するわけではない。互いの意見の違いについての"議論"を"ケンカ"に変えてしまったことを謝るのだ。ケンカは一人でできない。つまり、ケンカを成立させてしまうほど自分が子どもじみていた、この一点に集中するのだ。 異なる意見の是是非非を唱えるなら

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    kohmota 2011/06/11
  • 子育ての原則=待つこと「男の子が自立する子育て」

    最初に結論。子育てで最も大切なことは、「待つ」こと。 「父親」をやるようになって十年たつ。もう赤ちゃんでも幼児でもなくなり、いわゆる「手がかからない」状態だが、もうしばらく父業は続くだろう...子が自立するまで。やネットを読み漁り、近所の同業者と相談したり、試行錯誤をくりかえしてきた。育児関連は沢山あるが、子育ての原則はこれに尽きる、「待つこと」。 具体的に何をどうケアするかは時期それぞれになるが、準備をしたら、あとは見守る。助走を手伝ったり、しばらく併走することはあるかもしれない。だが、構えは「待つ」だ。実のところ、わたしはこの「待つ」が苦手だ。つい、口を出したり手を出したり「なんでできないの!」と叱ったりする。そのたびに反省しながら、子どもの成長を待つのが親の仕事だと自分に言い聞かせる。 放任ではなく、見守る。環境を整えたら、あとは子どもは育っていく。子どもの「育ち」を信頼するのだ。

    子育ての原則=待つこと「男の子が自立する子育て」
  • 横田創「埋葬」はスゴ本

    事実へのかかわり方で世界がズレる、これは初感覚ナリ。 読んでるうち、世界がでんぐり返る瞬間は体感したことがある。だが、これはその先がある。でんぐり返った所が真空となり、そこが物語を吸い込み始めてしまうので、穴をふさぐために自分が(読み手が)解釈を紡ぎなおさなければならない―――こんな感覚は、初めてだ。 若い女と乳幼児の遺体が発見された。犯人の少年に死刑判決が下されるが、夫が手記を発表する。「はわたしを誘ってくれた。一緒に死のうとわたしを誘ってくれた。なのにわたしはと一緒に死ぬことができなかった。と娘を埋める前に夜が明けてしまった」―――手記の大半は、と娘を「埋葬」する夫の告白なのだが、進むにつれ胸騒ぎがとまらなくなる。 なぜなら、おかしいのだ。冒頭で示される記事と、あきらかに辻褄があわないのだ。「信頼できない語り手」の手法は小説作法でおなじみだが、夫は嘘は語っていない。妄念と真実の

    横田創「埋葬」はスゴ本
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    kohmota 2011/05/16
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