「日本を知るには、明治維新前の科学を見るのがおもしろい。」雪の科学者、中谷宇吉郎が自身のエッセイの中で語っていた。日本の科学は、明治以後になって輸入され、模倣されたものが多い。だから中谷宇吉郎は、明治維新前の日本の科学を解釈し、独創性ある隠れた科学を堀り起こした。特に江戸時代は、自然科学に目覚め、数学を生活の中に取り入れ、医療も格段に発展した時期でもある。本書は、この中谷博士の「日本の心」を探求する姿勢を踏襲するものではないだろうか。 「江戸の天文暦学」「江戸の測量術」「江戸の医学」「江戸の数学・和算」「江戸を彩る理系人たち」という5つの章から構成され、天文暦学者・渋川晴海にはじまり、測量家・伊能忠敬、北方調査団・間宮林蔵、医師・華岡青州、和算家・関孝和、本草学者・平賀源内など、様々な科学者の経歴や功績を追いかけていく。読みやすさにもこだわり、図版が多数挿入されている点も嬉しいところだ。三