終活ってわけではないが、ずいぶん前から「この連載の最終回はこちらにしよう」と考えていたお店があった。だが皆さんも御存知のとおり突然の「みんなのごはん」更新終了にともない、この連載も最終回を迎えることになってしまった。最終回をアップしたとき、「本来の最終回を書かなければ終えられない」という気持ちが沸々とわいてきて、担当編集に「あと一回!どうかどうか」と泣き入り、こうして番外編を書かせていただく機会を得た。ありがたい。 会社に勤めていた頃の父は忙しい人だった。毎晩夜遅くに帰宅していたので、顔を合わせない日も多かった。ある朝、父が山男のようなヒゲを伸ばしていて驚いてしまったこともある。休日を利用して泊まりで旅行へ行った記憶もない。夏休みに父と遊んだ記憶も数えるほどだ。日帰りで訪れた伊豆の海の青さと、遊園地の波のあるプールの輝き。記憶の色彩は思い出が少ない分、鮮烈な印象をもって僕の記憶に残っている