季節の変わり目が、風の匂いでわかる。 ドクダミの匂い ナシの花の匂い 土砂降りの雨の前の匂い カンカン照りのアスファルトの匂い。 空気が変わる。 あの梅雨の寂しさとか あの夏の熱狂とか あの人が生きていた頃とか その人に恋していたこととか ふ、っと胸をよぎる瞬間がある。 そのたび、切なくなる。 生きていると感じる。 生きていたくなかった過去があって 生きていたい今があって この先どうなるかはわからくても。 思い出すのは あの時のこと 魂が焦げる匂いがする それは毎年のことで、10代の頃に比べて年々弱まってはいるけれど 変わらない私の魔法。