アフリカ東部エチオピアで同国の伝統音楽とジャズを融合させた「エチオジャズ」が再び黄金期を迎えつつある。共産主義体制下、米国や英国に逃れたミュージシャンが首都アディスアベバに戻り始めたのだ。 エチオジャズの父とされるムラトゥ・アスタッケ氏は西部ジンマで生まれ、ロンドンやニューヨーク、ボストンで音楽を学んだ。 エチオピアの伝統音楽は、1オクターブに8音が含まれる西洋音楽とは異なって、5音から成る。氏は1970年代前半、米ジャズピアニスト、デューク・エリントン氏(故人)と交流、1オクターブに12音あるジャズをエチオピアの5音階に移調して、エチオジャズの基礎を築いた。 シンプルで力強い祖国の伝統音楽と西洋音楽の融合作業は困難を極めた。まず西洋の楽器が言うことを聞かない。そんな相克の中から生まれたエチオジャズは土俗的な世界を奏でて、熱狂的なファンを集めた。 黄金期はしかし、すぐに終わりを迎える。74