タグ

ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (11)

  • 恋愛より特別なこと - 傘をひらいて、空を

    わたしが一緒に住んでいる女は恋人ではない。 でもない。であればラクだとは思う。お互いのオフィシャルな緊急連絡先になって、どちらかが入院したらもう片方も病室に入れて、先に死んだほうの遺産が残ったほうに自動で行く。いいなあ、めちゃくちゃラクそう。 でもわたしたちは結婚することはできない。わたしたちはどちらも女である。 わたしたちは互いの稼ぎを持ち寄り、住居の確保から家事の分担まで二人で意思決定し、生活をともにしている。相手がいなくなったら生活を立て直さなくてはいけない。そういう相手を何と呼ぶのかと、同居人でない別の友人に訊いたら、パートナーじゃん、との回答が返ってきた。 わたしは反論する。いやそれは籍を入れてないカップルの呼び方でしょ。わたしたち恋愛してないから。する予定もないから。 そもそも恋愛や性愛がパートナーシップにくっついてくるのが、変だと思うんだよねえ。友人はそのように言う。相互

    恋愛より特別なこと - 傘をひらいて、空を
    kou-qana
    kou-qana 2023/11/08
    恋愛じゃないけど排他的ってどういうこと?と思ったけどこういうのか…なるほどなような、私の中ではこれも恋愛のような。イギリスで兄弟でパートナーシップ制度を認めて欲しいって主張あるけどそんな感じ?
  • だって他人だもん - 傘をひらいて、空を

    上司がビールを注文した。わたしは咄嗟に目を伏せ、その目を左右に泳がせた。隣の後輩とがっちり目が合った。彼もまた目を伏せてそれを泳がせていたのである。 今日は会社の近くで飲んでいた。わたしは様子を見て一次会でおいとました。駅に向かって歩き出すと、先ほど目があった後輩が追いついてきた。 彼は言った。あの人、飲むんすね。わたしも言った。飲むんだね。びっくりしたわ。 上司は先月、会議中に倒れた。発見が遅れたら死んでもおかしくなかったそうだ。人があとからそう言っていた。人がいるところで倒れたのがよかった、というのもなんだが、しかしよかったのだ、迅速に病院に運ばれて、死なずに済んで、すぐに会社に出てくるほど回復したのだから。 この上司の不摂生は有名だった。今どき珍しいくらいよく飲む。翌日が平日でも終電を超えて飲む。短めの二次会までは普通の飲み会である。最初からよく飲む人だが、その後は飲み方がより激し

    だって他人だもん - 傘をひらいて、空を
    kou-qana
    kou-qana 2023/07/05
    介入するほどのおせっかいじゃなくて「えっ、飲むんですか?大丈夫なんですか?!」と聞いて、でも上司の選択を尊重する距離感の登場人物は出てこなくて、二人とも止めるか放置の2択の人?
  • 一人称が強すぎる - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。そのためにもっとも影響を受けたのが医療機関である。わたしは二年以上、いわゆる同居家族以外と私的に会うことをしなかった。 まじめだねえ、と友人が言う。二年のあいだに引っ越してフリーランスになって子どもが小学校に入ったというが、人はあまり変わったように見えない。 まじめだねえと彼女は繰り返す。わたしの知ってる別の医者なんかばんばん飲み歩いてたよ。ストレスたまるからって。おごるからつきあえって言われて、まあ行ったけどもさあ。 そういう人もいる、とわたしは言う。わたしはそうしない。その人はストレス解消といろんなリスクを天秤にかけて、早くから飲みに行くのを選んだのでしょう。とにかくリスクを減らそうとするなら今でも人と会わないのだし、カフェインもアルコールも取らずに完璧な生活をして睡眠をとることに全力を注ぐでしょ。そういう人もい

    一人称が強すぎる - 傘をひらいて、空を
    kou-qana
    kou-qana 2022/07/06
    "笑顔で"話とセットでうまいな〜選べる質の語り手に選べない質を提示する回だけど、「そうか」って放り出すの。私は選びたい派。他者の選ばなさは受容したい。人は弱い。でもこれ読者に選ばない人を批判させたい?
  • 素直で笑顔で気がきいて - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。そのためにわたしの職場にもリモートワークが導入され、出社しても顔を合わせる会議は最低限になった。飲み会はもちろんない。そのためにわたしはしばらく水木さんにつかまらずにすんでいた。 水木さんはわたしの同期であって、とてもいい人である。やわらかな笑顔を絶やさず、細やかな気遣いをみせ、辛抱強くがんばりやで、後輩の面倒見もよい。 でもわたしは彼女とあまりかかわりあいになりたくなかった。 十年と少し前、わたしと彼女はともに新入社員だった。一年目はなにしろわけがわからないものである。だからたいていのことはいったん「そういうものか」と受け取って、あとで検討することにしていた。 わたしは仕事が終わると毎晩「私的日報」と名付けたファイルをひらいて、その日に覚えたことのほか、確認検討すべきことを書き留めた。たとえば「隣の部署のお茶出しを頼ま

    素直で笑顔で気がきいて - 傘をひらいて、空を
    kou-qana
    kou-qana 2022/06/14
    水木さんを面倒くさい女に書きたいのか、主人公を正しさ信奉者に書きたいのか、両方か、読者によってどちらかに肩入れするように書いたのか、そこまでコントロール意図はなくどちらの側も突き放しているだけか…
  • あの女の恋愛感情を利用していい生活をしてやろう - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。それがきっかけで僕と彼女は一緒に暮らし始めたのだけれど、この生活が気に入りすぎて疫病の流行が終わってもやめたくない。 つきあって三ヶ月という、恋愛的にいちばん盛り上がっているタイミングで同居したから、すぐ破綻してもおかしくないと思っていた。なにしろ僕はすぐ飽きちゃうのだ。女の子と半年以上つきあったことがない。 僕の個人的な感覚では、同じ相手とのセックスは三回目から十回目がピークで、あとはまああってもなくてもという感じだし、恋愛的な様式としてのデートについては「女の子のドリームを読み取ってサービスするのめんどくせえな」と思う。だから自分は長期的な関係に向いてないのかなあ、なんて思っていたのだけれど、好きな人と生活を共にしてみたら継続したくなったので、向いてなかったのは長期的な関係というより長期的な「恋愛」関係だったみたいだ

    あの女の恋愛感情を利用していい生活をしてやろう - 傘をひらいて、空を
    kou-qana
    kou-qana 2022/04/20
    面白かった。いつか私と似たタイプのお話が読めるかなあ、とちょっぴり期待してるけど、大抵は身近かつ異質でそれ故に細かな不満があったり。今回はあまりに遠いお話なので楽しく読めた。何気に理想的生活だし
  • コンテンツ必要ない系の人々 - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。そのためにわたしに新しい出会いの機会がなくなった。恋愛の話ではない。仕事のコネクションとかの話でもない。友人知人の話である。わたしは知らない人と新しく知り合うのがとっても好きなのだ。利害関係も色恋沙汰もないところで雑談がしたいのだ。そうして「人間はみんなちがう」と思う、するとなんだか安心する。これができないとなんだか世界が平板になった気がしてうそ寒く落ち着かない。知らない人としゃべりたい。 その欲求にこたえたのはもちろんインターネットである。ウイルスが載らないコミュニケーション手段。知らない人もうようよしている。知り合うとっかかりとしては趣味がもっともやりやすい。わたしは小説やマンガの話ができる相手を探し、気の合う仲間を手に入れた。めでたし。 めでたしなのだが、彼らのある種の性質にわたしは少々困っている。 小説やマンガの

    コンテンツ必要ない系の人々 - 傘をひらいて、空を
    kou-qana
    kou-qana 2022/04/06
    新作?あ、朝井リョウの新作って意味かな?語り手が作家という設定なのかと少し混乱した。「両方好きなのに片方が片方をけなして悲しい」って気持ち私も覚えがあるけど、独白体で書くと臭みあるね。反省。
  • 母の死に目に会えないだろう - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。だから僕はそれ以来母に会っていない。 僕が母と呼ぶのは養母のことである。実母は僕を産んですぐに亡くなった。もちろん記憶にはない。 血のつながりというものがどれほど強いのか僕にはわからない。僕は父とは血のつながりがあって母とはない、そいういう家庭で育ったわけだけれど、父母のどちらかだけを物の親だと思ったことはない。 父は僕と子ども同士のように遊ぶばかりの(今にして思えば)子育ての実務の役に立つことのない人だったし、父の威厳みたいなものもぜんぜんなかった。母は母でずいぶんと(当時にしては)進歩的な考え方の、なかなかのインテリで、高校の教員をしていて、当時のティピカルな母親像みたいなことをやってくれる人ではなかった。おかずはだいたいスーパーかデパ地下のやつで、僕はそれを親たちと一緒にべて大きくなったのである。 そんなだから

    母の死に目に会えないだろう - 傘をひらいて、空を
    kou-qana
    kou-qana 2022/02/16
    養母の描写、私と感覚が近いけど実子でも18歳のおむつは替えないな。介護が必要ならやるけど冗談としてはナシ。/疫病創作シリーズ、片隅の喪失を掬い取るというより隠された怒りを感じる…隠されない怒りも書いて欲し
  • わたしの弟はワクチンを打たない - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。最初の通達から一年あまり、何度目かの通達のさなか、疫病のワクチンが提供されはじめた。それで全員が打つかといえば、そうではない。わたしの弟は打たないという。そして、わたしはそれを責めることができない。 弟は東京で一人暮らしをして、アルバイトで生計を立てている。今日働かなければ来月の家賃があやうい。運も悪かったし、弟の思慮が足りないところもあったと思うのだけれど、とりあえず自分で生活はできているのだし、人に大きな迷惑をかけているわけでもなし、責められるようなことではない。 わたしはそう思っているのだが、両親は「恥だ」と思っている。自分たちの助言をふいにして大学進学をせず、夢みたいなことを言っておかしな企業に就職してすぐに辞めてその日暮らしをしている、そんな浅はかな息子は心配するのも癪だと、そういうふうに思っている。 そうはい

    わたしの弟はワクチンを打たない - 傘をひらいて、空を
    kou-qana
    kou-qana 2021/08/25
    こういうの読むと「私はそんな正義の側に立つ世間とは違うもん!想像力あるもん!」とノットオールパーソン主張をしたくなる病気に罹っている。同じ内容でもエモくない書き方だと感情的反発を感じない気もする
  • どうして、お母さん - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。それでわたしは母に会うことができない。 わたしの母はすごく感じのいい人だった。同世代や祖父母世代だけでなく、わたしの友だちもみんなそう言った。母はわたしの覚えているかぎり場違いなふるまいをしたことがなかった。家にどんな人が来たときにも、旅行先でも、わたしの保護者として学校に来るときでも、親戚の集まりでも。 小学生のころまではそういうのが当たり前だと思っていた。お母さんは大人だからねって思ってた。お父さんはお母さんに比べてドジだなって思ってた。父はときどき誰かと言い争いをしたり、発言すべきでないときに発言して気まずそうな顔になったりしていたから。それで人に笑われたりもしていたから。 わたしはおよそ母を嫌う人やばかにする人を見たことがなかった。母はいつも適切なふるまいをしていた。高校生までのわたしの目には、そのように見えた。

    どうして、お母さん - 傘をひらいて、空を
    kou-qana
    kou-qana 2021/08/10
    ここまで破綻なくやってこれてしまった奇跡、でも思えば小学校の時のあの出来事は母の世界が壊れる危険があったけれど辛くも回避したのだったと思い当たる、みたいな連作が読みたい。
  • 俺に口を利くなというのか - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。そのときわたしは一人暮らしだった。こんな世の中だから、とわたしの交際相手は言った。不安だよね。一緒に暮らそう。結婚しよう。 そうしてわたしたちはたがいの両親に会い、いささか古いと思いながらも「婚約」というプロセスもやることにした。区役所に婚姻届を出す前に結婚式の準備をしながら同居して生活を整える期間をもうけたのだ。 結果として、これは正解だった。さっさと籍を入れていたらより面倒なことになったはずだからだ。婚約してよかった。そう、わたしは婚約から半年後、それを破棄したのである。 最初に疑問を感じたのは彼の「いいよ」ということばだった。 結婚すると決めて以降、この小さなことばの使い方が、ほんの少し変わったように感じたのだ。それまでは「コンビニ寄っていい?」「いいよ」といった使い方だった。これはぜんぜんおかしくない。友だちにも

    俺に口を利くなというのか - 傘をひらいて、空を
    kou-qana
    kou-qana 2021/05/19
    もうひとひねり、わかる。けど、よくよく考えるけどくよくよ考えない性格造形なので、はじめからスカッとが約束されてる所が良い気がする。主人公が強者なのと夫の小物感描写が「ハイになる」がキツイ、のも良い
  • 呪いをかけられなかった娘 - 傘をひらいて、空を

    三十歳前後からまわりの女たちの半分くらいが変な感じになった。結婚するとかしないとかできないとかしたくないとか、そういうことをやたらと言うようになった。わたしは全員に「そお」とこたえた。そんなの好きにすりゃあいいじゃんねえ、と思った。日における結婚は自由意思に基づく契約行為である。契約内容は民法で決まっていて、その効力は当人二名のあいだに及ぶ。それから養育される子どもや相続が発生しうる親族には関係がある。でもそれ以外にはまったく関係がない。どうして契約主体でない他人の結婚をとやかく言うのか。まして友人結婚相手なんか完全にどうでもいい人である。そんなのをやいやい話の種にするなんて変だなと思った。 結婚しないのかとわたしに訊く友人もあった。わたしは何も考えず「しない」とこたえた。どうしてと問うので「必要ないから」とこたえた。あれはないわ、と同席していた別の友人があとから言った。あれは嫌われる

    呪いをかけられなかった娘 - 傘をひらいて、空を
    kou-qana
    kou-qana 2019/08/14
    呪われし女たちがあんたを見て腹を立てる、といった人の立ち位置が気になる
  • 1