戸田球場のブルペンで一心不乱に球を投げ込んでいた一場。同時期にヤクルトから戦力外通告を受けた選手の今後では、現役引退してコーチになった者、他球団の用具担当スタッフになった者、まだ今後を未定とする者など、様々な選択があった。 埼玉・戸田球場のセンター後方にあるブルペンでは、パーン、パーンと、キャッチャーミットの乾いた音が鳴り響く。 「いい! いいボールだ!!」 ヤクルトに移籍して以来、ずっとボールを受けてもらっているブルペン捕手の小山田貴雄の掛け声が止むことはない。 一場靖弘の顔にも自然と笑みがこぼれる。 「トライアウトに合わせて準備してきましたからね。真っ直ぐの調子はいいですし、全体的にも状態はいいです」 「ほんと、調子はいいんです」。自信と不安が交差するインタビュー。 調子がいい。状態はいい――。 これまでも一場の口から何度かそんな言葉を聞いたことがあったし、報道でも何度か目にしてきた。