秘境というと外部の人が足を踏み入れたことのない地域を指すが、日本にもまだ秘境が残っている。歴代天皇・皇族の陵墓だ。陵墓の中でも特に古墳時代の陵墓古墳は専門の考古学者や研究者もほとんど入ることが許されない。本書ではその陵墓古墳の現状と歴史、研究上の問題点が整理されている。 三世紀中頃の巨大な前方後円墳の登場から六世紀末の前方後円墳衰退後に主流となる円墳・方墳などが消滅する八世紀末までが考古学上の古墳時代となる。この考古学上の古墳のうち宮内庁が管理している陵・墓・陵墓参考地を陵墓古墳と呼ぶ。皇室典範第二十七条には「天皇、皇后、太皇太后及び皇太后を葬る所を陵、その他の皇族を葬る所を墓とし、陵及び墓に関する事項は、これを陵籍及び墓籍に登録する。」と定められ、陵・墓とは別に、陵墓の治定が完了した1890年代以降に『巨大な古墳や多数の優れた副葬品を出土した古墳を陵墓参考地』(P19)と呼んでいる。現在