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2010年12月28日のブックマーク (1件)

  • 私たちが犬だったころ - 傘をひらいて、空を

    一年しかもたなかったと彼は言った。人間扱いされなかったんだよね、だから。それって具体的にどういうこと、と私は訊く。殴る蹴るだよと彼はこたえた。大人になってあんなに殴られると思わなかった。私は反射的に声を荒げた。なにそれ、どうして黙って殴られてたの、なんでそんなところに一年もいたの。 真剣だからって言ってたな。彼は少し明るい声になって言う。真剣だからうまくいかないと殴るんだって、そう言ってた。気性の激しい、自分の感情にのみこまれるような人でね、才能だけ、仕事だけの人、僕は、あの人の仕事が好きだった、そしてあの人のところでは人が育っていた。 彼がスタイリストの弟子をしていたときの話を聞いていたら、殴られる話が出てきたのだった。そんなの、少しも、関係ないでしょう。私は力なく言う。才能が暴力を免責するはずがないでしょう。 彼は私を見て薄く笑った。蔑んでいる、と私は思う。彼は私を蔑んでいる。圧倒的な

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