Skypeに応答するとなんで映像切ってるのと彼女は言う。部屋中に洗濯物を干してるからだよと私はこたえる。それに電話っぽいほうが違和感がないっていうか、映像までついてると、過剰な気がする、恋をして頭がおかしくなってるときにその相手を見る、くらいのときには映像つきでちょうどいいけど、ふつうの会話には要らないと思うよ。 私だけ映像見せてるなんて不公平っぽい、と彼女は言う。目の前のウインドウの中から手が伸びてきて、ウインドウの光が消えた。今のなにと訊くと絆創膏貼ったと彼女はこたえる。カメラだけ切る方法わかんなかったから、そこにあった絆創膏貼った。私は延々と笑い、何がそんなに可笑しいのと彼女は尋ねる。私は彼女の少し古いマッキントッシュに絆創膏がついている姿を想像してしつこく笑う。 最近はいいのと訊くとだいぶ、と彼女はこたえる。この数年、私たちは年に一度はそのようなやりとりをする。十年前、二十代半ばの
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