東京から南東方向へ約4千キロ。太平洋のほぼ真ん中、見渡す限り真っ青な海が広がる眼下に、ビキニ環礁が姿を現した。 サンゴが隆起しててできた23の島が首飾りのように連なる。島々はヤシの木々の緑に覆われている。 その環礁の北西角に、ぽっかりと開いたくぼみが見えた。周りの明るい色と違い、海の青さは濃く深い。 通称「ブラボー・クレーター」。1954年3月1日、米国の水爆「ブラボー」の実験でできた。直径約2キロ、深さ約80メートル。海底にはすり鉢のように筋状の模様があり、中心に向かって深くなる。常夏の海に刻まれた「核の傷痕」だ。 広島原爆の1千倍の威力といわれたこの爆発で、周囲にあった三つの島が吹き飛び、放射性物質が広範囲にまき散らされた。事前に避難しなかった危険区域外の環礁の住民や、日本のマグロ漁船「第五福竜丸」など周辺で操業中だった船舶が「死の灰」を浴びた。 ビキニ環礁の地方政府によると、核実験前