石井光太さんのルポ『遺体 震災、津波の果てに』(新潮社)が映画化された。昨日、その試写会に招かれたので拝見した。 正直にいうと、実はちょっと気が重かった。私はネットで予告編をすでに見ており、それを見ただけで目頭が熱くなってきたので、映画を観ながらぼろぼろ泣くはめになるのではないかと思っていたのだ。最近は本でも映画でも、「泣ける」のが一つの売りになっているが、私はそういう「泣かせる」話が大嫌いなのだ。 もうひとつ懸念したのは脚色の仕方である。石井さんの『遺体』をお読みになった方はご存知の通り、この本のテーマは極めて重い。全編が震災による被災者の遺体と、それに向き合う人々の姿だ。そこには映画的な恋愛物語もなければ、活劇もなく、しかも結末が明るいわけでもない。場所も遺体安置所からほとんど動かない。それをどのように映画的な物語にするのだろうか。 上映時間は1時間45分。映画の場面は遺体安置所からほ