「妖怪って昔からいるんでしょう?」 と――みなさんそう思っていらっしゃるでしょう。実は、それは間違いなのです。騙されているのです。僕たちは。 少なくとも、江戸時代には「妖怪さん」なんて方々はいらっしゃらなかったのです。「えー、でも江戸時代にだって妖怪いたじゃん。絵とか残ってるでしょ」 と、おっしゃる方もいるでしょう。残念でした。あれは「化け物」。そうでなかったら「鬼」か「神」、さもなければ単に怪しい現象の絵です。 「えー、だって田舎とかに古くから伝わってるらしいよ、なんか、そういう妖怪」 と、おっしゃる方もいるでしょう。またまた残念でした。たしかに、全国各地にいろんな怪しいモノゴトは伝わっているでしょう。でも、それが「妖怪」と呼ばれ始めたのは最近のことなんです。もちろん、昔から「妖怪」という言葉自体はあるにはあったのですが、「妖怪さん」は、少なくともいませんでした。明治・大正・昭和と紆余曲