どんな研究がいい研究か?いろいろな考えがあるだろうけれど、わかりやすい研究がいちばんだ。気の利いた小学生高学年の子にわかるように説明できる研究、というのがひとつの条件だと常々思っている。この本の著者である吉崎さんの研究目的はほんとうにわかりやすい。小学生どころか幼稚園児でもわかるかもしれない。サバにマグロを産ませようというのだ。ほ乳類ではないのだから、より正確には、サバの体の中でマグロの卵子と精子を作らせようという研究だ。 研究には基礎研究と応用研究がある。この研究、目的としては応用研究である。乱獲がたたり、クロマグロが減少している中、近畿大学がクロマグロの完全養殖に成功したという話は有名だ。吉崎さんの夢はもっとでっかい。養殖ではなくて、クロマグロの稚魚を大量に作って、大海原に放流しようというのだ。しかし、採卵するには、100キログラムにもなるまでクロマグロを育てなければならない。そのため