江戸時代後期の大阪に適塾という蘭学塾がありました。 医者で蘭学者だった緒方洪庵が開いたものです。この塾からは福沢諭吉をはじめ、大村益次郎、橋本佐内といった多くの人傑を輩出しています。 幕末当時、この塾は蘭学の最高峰にあり、江戸の諸塾はもとより学問が盛んであった大阪においても他を圧していたそうです。福沢諭吉が著した『福翁自伝』の中で適塾における蘭学の学習方法が書かれていますが、ユニークなので紹介します。 まず初めて塾に入門した者は何も知らぬ。何も知らぬ者にどうして教えるかというと、・・・オランダの文典が二冊ある。一をガラマンチカといい、一をセインタキスという。初学の者には、まずそのガラマンチカを教え、素読*1を授ける傍らに講釈をもして聞かせる。これを一冊読み終わるとセインタキスをまたその通りにして教える。どうやらこうやら二冊の文典が解せるようになったところで会読*2をさせる。会読というこ