以前アルバイトをしていた会社のトイレで、トイレットペーパーをずっとカラカラ回している人がいた。 誰が、なぜ、そんなにカラカラするのか? その謎を追っていくうちに、まるで知らない世界が見えてきた。 これはトイレットペーパーにまつわる、そんな小さな物語である。 (※プライバシー等の事情から、設定などに脚色を入れています。実話をもとにしたストーリーとしてお読みください。なおエイプリールフールとは無関係です。) 隣室から聞こえる音 その音を初めて聞いたのは、夏の終わりのこと。職場の個室トイレにいた僕は、用を終え、立ちあがろうとしていた。その時だった。 隣室から、トイレットペーパーを引く音が聞こえてきた。 当時バイトしていた会社は、もともと小さな法律事務所だった。 だがいろんな事業に手を出し始めて、人が急激に増えたことで、個室トイレの数が足りなくなった。だからこうして、誰かと隣り合わせることも多かっ