— 統計学講義ノート— 小波秀雄 April, 2009 i はじめに 多数のデータから意味のある情報を抽出するのが統計的手法であり,その理論が統計 学 (statistics) である。統計学は,確率論を基礎にして,不確実性を含む多数のデータ から,一定の確実さをもった判断を下すことを目的にしている。 統計学は,社会や人間に関わるさまざまな事象の分析と多数のデータの定量的な取り扱 いを可能にすることから,社会科学や医学などの人間集団を相手にした学問研究分野,心 理学や教育学などの人間行動の分野,品質管理などの生産現場,保険や経営といったマ ネージメント分野,また政策決定のための指針作成など,さまざまの分野で広範に活用さ れている。 自然科学の分野でも,不確実性を含む自然現象 — 生物,気象,放射線など— において はデータの統計的な取り扱いが必要になる。また情報理論の中でも確率論とその