もう、何年前のことだろうか。 いつものように携帯ショップで仕事をしているときに、声をかけられた。 「ねえ、私わからないことがあるの、教えてくださらない?」 はい、何でも聞いてください! と接客体勢に入った。五十代くらいの女性だった。 最初はガラケーのプランについての質問だった。しかし、わたしはその人のカバンに入っているガラケーの外装をチラっと見てすぐわかった。フォルムや色味で、ほんの一部しか見えなくてもわたしはどこの機種かわかる。 他社のガラケーだった。 なぜ、キャリアショップであるわたしの勤務店へ来たのか。単純に間違えたのか。あまり否定から入りたくないので、質問に答えながら、さりげなく「当社○○のサービスですと」などの言葉を混ぜてみる。うまくいけば乗り換えの相談に持ち込めるかもしれない。わたしはいつも通り丁寧に接した。 「何で最近はスマホばかり安くするの?」 急にそんな質問が来た。