ケータイ小説は現代の陰画か[掲載]2008年8月17日[評者]石原千秋(早稲田大学教授)■夏の読書特集 新書を読もう! 一時はアメリカの「ニューヨーク・タイムズ」や全国ネットの「CBS」までが特集を組んだ日本のケータイ小説ブームもいまは盛りを過ぎたようだが、それだけにその特徴がはっきり見えてきた。 本田透は「売春、レイプ、妊娠、薬物、不治の病、自殺、真実の愛」がケータイ小説に必須のアイテムだとしている(『なぜケータイ小説は売れるのか』ソフトバンク新書)。これを踏まえて私は、ケータイ小説には物語を「リアル」に見せて、「大人」には届かないループを形成する仕掛けがあり、「少女=きれい/大人=汚い」の二項対立の構造や男性優位のホモソーシャル構造などによって構成された、性を記号として書くポスト=ポスト・モダン小説だと分析した(『ケータイ小説は文学か』)。 菅聡子編『〈少女小説〉ワンダーランド』は、明