僕はATMだ。ちがう、僕はATMが苦手だ。一回の利用時間が長いため、後ろの列のプレッシャーに絶えきれないからだ。僕の場合、給料が振り込まれる銀行口座と、家賃を振り込み先の銀行が異なるので毎回煩雑な作業をしないといけない。給料口座から現金を引き出し、家賃振込用の口座へ預け入れる。そして家賃を家主へ振り込む。これ以外にも解決策はあるはずなのだが、こういう風に落ち着いてしまった。 作業時間が長いと後ろが気になる。ふと振り向くと、ずらりと並ぶ人、人、人。みんな普通の顔をしているが、ガラスの扉越しに見る彼らは、どこか苛立っているようにも思えた。 落ち着け。落ち着くんだ。素数を数えよう。素数は孤独な数字。私に勇気を与えてくれる。そしてこう呟くのだ。ハクナマタタ!そうすると、後ろのおじさんおばさんは、一人残らずティモンとプンバになり、僕は作業に集中できる。 全く。なぜATMは操作する人をあおるような作り