■書評 リチャード・アレン著「映画を見ること」"Looking at Motion Pictures" (リチャード・アレン、マレイ・スミス共編『映画理論と哲学』R. Allen, M.Smith, Film Theory and Philosophy (Oxford: Oxford U.P.,1997=1999)に収録)―分析哲学が映画学にできること、または分析哲学の挑戦ー 石田美紀 はじめに 「アメリカのアカデミズムが誇る人文系の学問領域を挙げてくれ」。こんな質問に出くわすなら、その答えに次の学問領域があがったとしても、多くの人は困難をそう覚えず、納得してくれるのではないだろうか。映画学と分析哲学である。前者の理由はいわずもがなであるが、あえて述べるとすれば、映画はアメリカ文化が真っ先に世界に誇るものであり、アメリカの多くのの大学は映画製作だけでなく、映画を歴史的・理論的に研究する映画