南陽市出身、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! 昔、どんづまりの人を見たことがある。 私は三十代半ばまでサラリーマン生活をしていた。富山の置き薬みたいなルート販売をやっている製薬会社に勤務していた。ドラッグストアが乱立している今、若い人にはなじみがないかもしれない。「薬箱を家に置かせてもらって、使った分だけお代をいただく仕組みです。いざとなったら役に立ちますよ。なかには風邪薬も鎮痛剤も入ってます」などと、二十代のころは新聞の拡張団のように一軒一軒飛びこんでは、関東や九州に行って開拓に励んだ。 拡張したあとは契約社員の仕事だ。約4~5か月に一度は巡回して、お代の回収&薬の売りこみといったルートセールスをする。彼ら契約社員の動向をチェックするのも私の仕事だった。訪問件数はどうか、売上金はどうなって