タグ

ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (8)

  • これはひどい──『動くものはすべて殺せ――アメリカ兵はベトナムで何をしたか』 - 基本読書

    動くものはすべて殺せ――アメリカ兵はベトナムで何をしたか 作者: ニック・タース,布施由紀子出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2015/10/02メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見るこれはひどいとしか言いようがない。 書はアメリカ兵によるベトナムでの残虐な行いを軍による調査資料と、現地の人々や帰還兵へのインタビューから炙りだした一冊である。もちろん人が殺し合う戦争という極限状況において強姦や無意味な殺戮、拷問といったことが起こることは仕方がないとは言わないまでも「そういうこともあるだろう」と納得する部分もある。 あるが、書の面白さはそのようなある種の前提を悠々と超えて「これはひどい」と思わせる点にある。その上、ベトナム戦争で行われていた残虐行為がこれまではほとんど表沙汰にならなかったのも「これはひどい」と思わせるものだ。『ベトナム戦争が勃発して以来、この扮装を

    これはひどい──『動くものはすべて殺せ――アメリカ兵はベトナムで何をしたか』 - 基本読書
  • ビッグデータ・コネクト (文春文庫) by 藤井太洋 - 基本読書

    ビッグデータ・コネクト (文春文庫) 作者: 藤井太洋出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2015/04/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見る「底の深い人」という表現は褒め言葉として捉えられることが多い。底が深ければ深いほどいろいろなものが入っていて、話しても楽しいし臨機応変な対応ができるということだろう。この感覚はそのまま作家商売(というよりかは人気商売か)であればあるほど、重要になってくる。底の深い、底知れない人間であればあるほど「次に何が飛び出すかわからない」と思うものである。「もうこの人からは同じものしか出てこないな」と思ってしまえば、次には繋がらないわけだから。ま、読者は読者で厄介なものでそういう事を思いながらも「過去の○○みたいな作品をまた書いてください!」とついつい言ってしまうものだが。 書『ビッグデータ・コネクト』の著者であるところの藤井太洋さんは

    ビッグデータ・コネクト (文春文庫) by 藤井太洋 - 基本読書
  • 捕食者なき世界 (文春文庫) by ウィリアムソウルゼンバーグ - 基本読書

    先日ネズミやネコといった小型の襲撃者が狩りを繰り返し絶滅を引き起こし続けている状況を書いたねずみに支配された島 by ウィリアムソウルゼンバーグ - 基読書 を紹介したので、同著者の前著も合わせて紹介しておこう。こちらは捕者がいない世界で何が起こるのかを描いた一冊で、あっと驚く内容になっている。とりあえず話の前段階として、ひとまずなにも手持ちの情報がない状態で「基動物だけで、捕者がいない生態系はどうなるか」と想像してみよう。緑が豊かで草動物や虫が跳梁跋扈している生命に満ちた世界を思い浮かべるかもしれない。だが実際にはそうはならない(ことがある)というのが書でみていく事例だ。 書で見ていく仮説は、シンプルなものである。たとえば北太平洋沿岸の豊かな藻場では、ウニをべるラッコが周辺にたくさんいれば、繁茂している環境をみることができる。海面へと伸びる葉の間には魚が泳いでおり、海

    捕食者なき世界 (文春文庫) by ウィリアムソウルゼンバーグ - 基本読書
  • SFをもっと楽しむための科学ノンフィクションはこれだ! - 基本読書

    記事名そのまま。SFが好きなのに科学ノンフィクションを読んでない人をみると「現代の最先端科学なんて、どれもほとんどSFでめちゃくちゃ面白いのにもったいない!」と思う。こんなことを考えたのも昨日、オービタルクラウドを最近出したばかりのSFジャンルをメインに執筆している藤井太洋さんのASCII.jp:ITとともに生まれた産業革命に匹敵する質的な方法論 (1/4)|遠藤諭の『デジタルの、これからを聞く』 こんなインタビュー記事を読んだからだ。 藤井さんはデビュー作であるGene Mapperを含め、現代で可能な科学技術の延長線上に起こりえる地続きの未来描写が特徴的で、「今・ここにある技術の凄さ」が感じられるところが毎回凄いんだよなあとこれを読んでいて思い返していた。またそこで使われているアイディアは現代でもそのまま使えるものが多いし。技術的には現実が既にSFなのだ。 透明マントだって現実化して

    SFをもっと楽しむための科学ノンフィクションはこれだ! - 基本読書
  • 押井守のガールズアンドパンツァー語り - 基本読書

    ガールズアンドパンツァーは素晴らしいアニメだった。 プロットはシンプルで、何よりも実際に戦車が動き、戦車ごとの特性が戦術、戦略に取り入れられ話が進んでいくのに感動した。そんな企画が通ったのもかわいい女の子しか出てこない「萌え」を配置した点があってのものだろうし、よかったなあ、そんな特殊文化がこの世には産まれていて、と無邪気に僕は思っていたのだが押井守さんの語りを読んでいたら、ずいぶんとそのことにとまどっているようだった。 一回もまともに見ていないと言い、「そもそも受け入れられる根拠がよくわからない」というその語りが面白い。よくも観てないのにこんなに語れるものだな、というぐらい語り尽くしている。ただそれだけアニメ文化の流れ、系譜というものを今までずっと分析してきたからこそ語れる内容でもある。しょうじき僕は全く詳しくないので、下記ロボットと兵器の区別など、安易なのではないかと思う区別もあるけれ

    押井守のガールズアンドパンツァー語り - 基本読書
  • 神林長平「ぼくらは都市を愛していた」刊行記念トークイベントに行ってきたよ(レポ) - 基本読書

    神林長平先生のトークイベントに行って来ました。先生はどうも自作について語ったりするのがあまり好きではないようで、こういう機会は希少なので絶対に逃せません。前回は確か2009年だったかな? 30周年記念トークイベントにも行ってきた僕でした。今回も行ってきた! 都市に住んでいて良かった! そして熱かった!! 神林先生の創作への熱意、クリエイターとしての圧倒的自負!! 神林長平こそが真のクリエイターだよぉ!!(燃えた) 今回のイベント、神林先生の他にも大森望さん、それからアーヴァンギャルドの松永天馬さんの三人が主に話す感じ(急に戻った)。僕は前者二人は知っていたのですが、松永天馬さんという方はまったく知らなかったので「うまく話が展開しないんじゃないか……」と勝手に不安に思っていたのですが、杞憂でしたね。なんだかとっても芯のある感じで、一人のクリエイターとして自身の意見をおっしゃられていました。

    神林長平「ぼくらは都市を愛していた」刊行記念トークイベントに行ってきたよ(レポ) - 基本読書
  • 読書会について - 基本読書

    読書会について書いていきます。長いですが下の方に結論だけまとめたものがあるので読めない場合、読み飛ばしてください。 僕は結構読書会をやってきた。大学生のときは先生と協力して読書会の授業を作って、毎週読書会を十何人でやったこともある。ネットで知り合った知人と読書会もやってきているし、スカイプ読書会も僕が企画したわけではないのだが何度か参加したことがあるし、スカイプジャンプ読書会というものを自分でやったりもした。自分で主催した数の方が多いが、主催側に立っているといろいろとできることできないこと、問題点などが明るみに出てくるものだ。 就職してからはすっかり読書会に自分から参加も企画もすることもなくなってしまったのだが、思えばもっと一回一回分析して「読書会」としてどこがまずくてどうすれば読書会は面白くなるのかといった経験を蓄積させていくべきだったかもしれないと今は考えている。なにしろ「面白い読書

    読書会について - 基本読書
  • 屍者の帝国(ネタバレなしSIDE) - 基本読書

    いまさら説明するのも野暮なほど有名になってしまった感があるが、今は亡き伊藤計劃が書いた30枚ほどの遺稿『屍者の帝国』をその盟友である円城塔が物語を書き継ぎ、完成させたものが書である。書は出版される敬意そのものが極上の物語であって、物語を読む前に物語が出来上がっていることも話題を盛り上げている一因になっているし、当然読みもそのようなメタ的な情報を含んだものになる。 さてはて実際の出来はといえば、これがまた凄い。プロローグには伊藤計劃が書き残した30ページほどがそのまま使われており、その後に円城塔先生が書いた『屍者の帝国』が続く。文体は「長い物語」を語る方向へ変化しているものの、円城塔らしさもまた残されている(この辺はまたちょっと微妙なんだけどね。後述)。まあ、どんなに消そうとしても現れてしまうものこそがその人固有の文体というものだろう。 元々伊藤計劃先生と円城塔先生の物語の作り方、文体ま

    屍者の帝国(ネタバレなしSIDE) - 基本読書
  • 1