息子がそろそろ就職を気にし始めた。 ほんの少し前まで「俺は大企業なんかは行かない」と言っていたのに最近では「おれ、行けるとこあるかなぁ」と実に謙虚である。ちなみにこの、大企業なんか行かないというのは、行けるか行けないかを度外視し、俺はオヤジみたいに事務職で毎日背広着て机に向かう仕事なんかしないということだったのだが、だんだん就職活動が現実として迫ってくると、安定性や向き不向き、好みの他に、そもそも自分を受け入れてくれるところはあるのか、ということに直面する。 「就職ガイダンスっていうのが学校であるんだけど行った方がいいかね」 ふだん、進路に関することなど私に相談したこともないのに珍しくそう言う。 「絶対行った方がいいよ。そういうところで最新の情報得たり、みんなはどうしているか動向がわかったりするんだから」 「・・・母さん、行ったの?」 「・・・行ってない。アタクシ、強力な縁故でしたから」