ただ、吉幾三が「ない」と歌っているのは目に見える「モノ」に限られ、阿部幸大氏が述べている「文化と教育」ではない。1984年にも都市と地方で「文化と教育の格差」は存在したはずなのだが。当時は「モノ」のほうにばかり関心が集中し、「文化と教育」にまで気がまわらなかったせいかもしれない。 今だったら「大学ねえ、短大ねえ、専門学校見たことねえ」「コンサートねえ、ライブもねえ、来るのは無名の演歌歌手」などと自虐的に歌っているはずである。 1986年生まれで、高校時代まで釧路市で過ごした阿部氏は、釧路市について「若者が集まる場所といえば『ジャスコ』しか選択肢がなく」、「もっともメジャーな路線のバスは30分に1本しか来ない」、「ユニクロやスタバがオープンすると大行列ができる」、「典型的な田舎町」と評している。 ただし、阿部氏自身はそう思っていても、釧路に住む人々の大部分はそう思っていないはずだし、おおむね