ムルマンスクの市章はオーロラと魚と船。その夜粘ったがオーロラは見えなかったこの記事の写真をすべて見る さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版、「世界の空港・駅から」。第9回はロシアのムルマンスク駅から。 * * * 世界最北端の鉄道駅である。ロシアのムルマンスク駅。北緯68度58分。今年(2016年)の3月、僕はこの駅の前にいた。 ユーラシア大陸の最南端駅から最北端駅に列車で向かうという旅の、終着点がこの駅だった。しかしこの駅を最北端というには、ふたつの注釈を加えないといけない。「一般乗客が利用できる駅として」と「おそらく」である。 実はこの駅から北西に向けてまだ線路は延びている。しばらく前まで、最北端駅は、その路線にあるニケリムルマンスキー駅だった。 その日、ムルマンスク駅に