上下巻に分かれた大部「カウントダウン・メルトダウン」(上参照・下参照)は、元朝日新聞社主筆の船橋洋一による福島第一原発事故のドキュメンタリーなので、てっきり朝日新聞社の刊行と思ったら、文藝春秋によるものだった。その点は意外感があった。 なぜ船橋洋一が福島第一原発事故を扱うのかという点には違和感はない。彼は2010年に朝日新聞社を退職した後、一般財団法人日本再建イニシアティブを設立して理事長となっていて、その下に彼自身が設立した福島原発事故独立検証委員会、通称「民間事故調」でそのプログラムディレクターとなっていたからだ。その意味で、これは「民間事故調」をプレーンな船橋洋一の文体で書き直したものだろうという予想は付いた。 実際、読んでみると、悪い意味ではなく、予想通りの作品である。さすが船橋さん、読みやすく、わかりやすく、そして、かなり公平に書かれている。なんで朝日新聞じゃないのだろうとここで