人間誰しも、自分のことは実はよく分からない。第3者の目を通して、初めて自分のことがよく分かる。本書は、日本をこよなく愛するアメリカ人が、日本の景観を「国際的な目線」で、縦横に論じたものである。指摘が全て的確で痛快極まりなく、またそれだけに読み終えて、とても恥ずかしくなった。 日本で暮らしているとなかなか気がつかないが、「日本は電線・鉄塔の無法地帯」である(第1章)。加えて大小無数の看板。著者は鋭く指摘する。「ゴタゴタと見苦しい看板だらけの環境になると、その場所に対する尊敬の念が生まれないので、人は粗雑な行動を取ってしまいます。『ゴタゴタに入れば、ゴタゴタに従え』という法則が発動してしまうのです」と。だから、余計に看板で細かく指導しないと、という悪循環に陥るのだろう(第2章)。 そして、山も谷も海もコンクリートのオンパレード。「環境に配慮して、簡素で周囲に溶け込む」土木工事ではなく、「いかに