生まれてはじめて、あんなに大きなフライパンとご対面した。直径は70センチくらい。優に目玉焼き30個をいっきに焼ける面積だ。この巨大な円形のなかで、なにかが揚げられている光景もはじめてだった。米南部、真のソウルフード・フライドチキンが、こんがりきつね色にじゅうじゅういっている。 “キング・オブ・フライドチキン”が揚げる、本場南部チキン ケンタッキーなど一般的なフライドチキンが、大量の油のなかにどっぷり浸り揚げられる「ディープフライ」であるのに対し、少量の油でフライパンで揚げるフライドチキンが「パンフライドチキン(pan-fried chicken)」。 あまり聞きなれないし想像もつかないパンフライドチキンは、米南部スタイルの調理法だ。先日、南部から遠く離れたニューヨークで、「最後にこんなに鶏肉のうま味を感じられるフライドチキンを食べたのはいつだろうか」と遠い目になるほどの、非常に正直で生真面