釣り漫画の最高傑作『釣りキチ三平』などの作品で知られ、2020年に惜しくも他界した漫画家・矢口高雄。矢口は、自伝漫画の名手としても高名であった。なかでも、『9で割れ!!―昭和銀行田園支店』は高校を卒業後、地元の銀行に就職した矢口が漫画家になるまでの歩みを描いた名作だ。エリート銀行員だった矢口は子ども時代の夢を捨てきれず、脱サラして漫画家を目指した。そんな矢口を金銭面や精神面で支えたのが妻の髙橋勝美さんである。出会いと新婚生活はどのようなものだったのか。思い出を振り返っていただいた。 髙橋勝美がモデルになっている矢口高雄の漫画『かつみ』。 漫画好きの銀行員と運命の出会い ――矢口高雄先生は高校卒業後、羽後銀行に就職しました。銀行員として初めて赴任したのが、秋田県羽後町の西馬音内支店です。この町で勝美さんと運命的な出会いがあったわけですね。 勝美:出会いのきっかけを話すと恥ずかしいんだけれど…