ジャズをジャンルから解き放つレジェンド ©Getty Images 2023年10月、ジョン・バティステの初来日公演があった。その日、最も印象的だったのは彼の演奏や歌だけでなく、ステージを降りてメロディカやタンバリンを手に客席を歩きながら、観客たちとともに歌い、踊り、音楽を通じてコミュニケーションを行っていたことだった。 彼は自身の音楽をジャズやソウルやヒップホップといったジャンル名ではなく、“ソーシャル・ミュージック”と呼ぶ。それはもともと音楽が持っていたはずの役割を蘇らせるように音楽を使っていることに由来する。 エンターテインメントとして、もしくはビジネスのために使われる前の音楽はコミュニティのために奏でられていた。そこでの音楽は儀式などの場でそのコミュニティの人たちをつなぐもの。 彼はそんな音楽の原初的な側面を意識しながら、この社会にいる様々な人を結びつけるために音楽を奏でている。2